千曲万来余話その689「ベートーヴェン七重奏曲という清新晴朗な意欲作をPh盤で聴く・・・」

 新年が明けました。令和7年2025年この年が皆々様にとり実り多き年になりますよう祈念申し上げます。
 100年ほど前に夜空を見上げジョヴァンニやカムパネルラが活躍する銀河鉄道の夜、作者没後1934年に初版本出版された作品は宮澤賢治珠玉のものである。夜の十時頃、東の空にはふたご座が位置してその左側に赤星の火星が見える。カストルとボルックスを左回りに眼をめぐらせると小犬座プロキオン、その南下にシリウス、少し視座を上げるとオリオン座ベルトの下のリゲル、その上におうし座アルデバラン、そして天頂には御者座カペルという冬の大六角形が見えて近くにジュピター木星も輝いている。
 18~19世紀にかけて文化文政の頃、東洲斎写楽、安藤=歌川広重らが名作をものにしているのだが、田沼政治や天明の飢饉など世情は不安定な様相で寛政の改革も歴史的な失敗を見せていた。時は1800年、ベートーヴェンは作品21でもってハ長調交響曲1番を世に問うている。その前作は変ホ長調7重奏曲作品20である。ウィーンでは、ハイドン作曲オラトリオ天地創造が初演された頃に当たり、B氏は当時フランス軍のオーストリア攻勢に対して果敢にも義勇軍歌をものしてウィーン市民にアッピールしている。ただ聴覚異状に気づきだしたのは1798年頃のことで、作品13いわゆる悲愴ソナタを創作、フリードリヒ・ウィルヘルム2世の1797年逝去など慌ただしい身の回りでもあったことは想像にかたくない。何よりもブルンスヴィク伯爵夫人アンナの令嬢テレーゼとヨゼフィーネ姉妹のウィーン滞在はルートヴィヒとして希望の存在であり、輝かしくも親しみやすい作品の創造に寄与していたことは大変に微笑ましい。
 新年に相応しい音楽を求めていたところ、フィリップス盤1965年頃録音によるライプツィヒ・ゲヴァントハウス楽員たちによるステレオ録音盤を再生、一聴してこの音楽紹介を思い至ることに相成った次第である。ヴァイオリン奏者はゲアハルト・ボッセで彼は晩年に日本でも指揮活動に精励しバッハの音楽などドイツ音楽の精髄を日本の演奏家たちに多大な寄与を記録している。もちろん当地にも20年前の1/27札幌交響楽団定期公演に登場、モーツァルト後期3大交響曲を指揮。この招聘は元事務局長による最初のプロジェクトだったかもしれない。宮澤敏夫81歳の元日コロナ罹患による訃報を知らされている。当時の音楽監督との偉大な業績の一つでこの音楽家の指揮、楽団にとり音楽的遺産として札幌の市民は大きな恩恵を受けたことになる。
 ステレオとモノラル録音の異なるところは、定位ローカリゼイションという左右中央の位置感覚であり、モノラルではマイクロフォンと楽器の遠近感に対して、左側そして中央から右側へと演奏者の立ち位置感覚が派生する。どういうことかというと、左側にヴァイオリンの音像が明確であるように右側にはチェロとコントラバス。なお音の周波数でいうとチェロのオクターブ8度音程の低い所にコントラバスのメロディーラインは聞き取れる。中央にはヴィオラ=アルトが生き生きと再生される。クラリネット、ファゴットそして右側にホルンの演奏が展開していて、これが、ステレオ録音の基本として時代基準にされている。
 そこで問題意識として、作曲者の感覚を類推するにこの楽器配置がすべてといえるものか否かということ盤友人としては、前列が弦楽アンサンブルそして後列に管楽器たちという原則を維持しつつも、コントラバスを左側下手に配置してその対称としてホルンの豊かな音楽を考える。前列の弦楽配置は中央にチェロがあり、左右にヴァイオリンとアルトを展開する、つまり弦楽三重奏を基本として後列左手側にコントラバス、ファゴット、クラリネット、右手側ホルンが中央に朝顔ベルが向くという具合に配置するのを理想と考えている。モノラル録音では問題にされない楽器配置問題、ステレオ録音の世界では、談論風発により好適な音楽を求める新年でありたいものである・・・