千曲万来余話その688「ブラームス2番、聴こえると言えばそうかも? 正統派ブッシュ指揮で」

 今年は余話675からスタートして年末に688ということは月1回のペースだった。もしか期待しているサイトウォッチャーの皆様には誠に申し訳ない。時代は目まぐるしく展開、大戦前夜導火線に火は点いていて不安や緊張感ある世情でも、ショーヘーオータニは記録更新の進展中である。193cm身長の若者は野球ファンの中でも日の丸同志の世代には希望の星かもしれない。米国球界のトップランナーとしての地位を確立には脱帽しかない。スタンディングオベイションこそ彼に相応しいのはもはや日米国民にとり共有感覚である。
 10年ほど前からブラームス交響曲第2番ニ長調作品73における楽譜異稿問題、トランペットとホルンの音型でタイすなわち音をつなげる記号の付記されているホルンと、それが無いトランペットの吹奏問題である。盤友人の所有する中でも
 独エレクトローラE 80896フリッツ・ブッシュ指揮デンマーク放送交響楽団1947年10月録音、
 伊CLS RPCL2057ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィルハーモニック1952年2月録音、
 蘭Ph盤ABL 3095ブルーノ・ワルター指揮NYPSO 1952年 録音、
 英EMI 1C192-53 776/779 カルロ・マリアジュリーニ指揮フィルハーモニア1963年録音、
 独アーキフォンARC-HQ001 カール・シューリヒト指揮シュトゥットゥガルト放送SO、
 英EMISLS5093オイゲン・ヨッフム指揮ロンドンフィルハーモニック、
 英EMI 16 9519 1 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送SO 1984年頃録音、
 独オルフェオS 070834 F ラファエル・クーベリク指揮バイエルン放送SO 1983年4月録音
 ホルンinEとトランペットinDの音型はタッタカターであり、クラリネットとホルンinD そしてアルトはタッタターターターつまり、この第1楽章402小節目には、タッタカターとタッタターとターという3種類の音型がオンビートで記譜されている。ムラヴィンスキー指揮するレニングラード・フィルハーモニックはヴァイオリン、フルート、オーボエ、トロンボーン、チェロ、コントラバスの演奏するターという音型にそろえているのだが、フリッツ・ブッシュ指揮する上記の8枚ではトランペットはタッタターという16分音符にタイをほどこした音楽が強調されている。
 翻って386小節目クワズィ リテネンテという発想表記イタリア語の意味するところ記憶するようにというブラームスによる書き込み。タッタターと言う音型がティンパニーとヴァイオリン、アルトである。ここまでは以前からの認識であって、補強として作品78のヴァイオリン・ソナタ第1番でもタッタターという開始からフィナーレ伴奏ピアノの音型がタッタターという執拗な繰り返される音型を指摘して更に、今年に気が付いたことは、第4楽章アレグロ コンスピリート(元気よく、精気をもって)序奏が済んで主部ヴァイオリン斉奏の音型はタターラ タラララすなわちタターラというヘミオラでの切分音シンコペーションの音楽こそ共有すべき音型なのではなかろうか?という展開である。
 F・ブッシュ1890.3/13ズィーゲン生~1951.9/14ロンドン没はアドルフVnやヘルマンVcの長兄である。ケルン音楽院で指揮法を修得、1909年指揮者デビューしてアーヘン、シュトゥットゥガルト、ドレスデン歌劇場でキャリアを積み1934~39年グラインドボーン音楽祭音楽監督として活躍していた。楽譜を詳細に研究する正統さ、情熱的な意志の強さなど映像記録でも伺える。トランペットとホルンの音型を際立たせることにより、ブラームスの真髄に迫る系譜は、ラファエル・クーベリク指揮のレコードでヴァイオリン両翼配置による豊かな音楽で記録されている40余年前。
 2024年は過ぎ去り2025年令和7年という歳神様をお迎えする、皆々様に取り仕合わせな年になりますやうにお祈りしてやまない・・・