千曲万来余話その675「F・タレガ曲アルハンブラ宮殿の思い出を美神アリス・アーツの弾く・・・」
2024年正月、昼に当地から眺める大雪山連峰は明確な稜線を見せていて珍しいほど見事な景色で新年の幕開けに相応しい晴天だった。ところが夕方4時30分頃テレビをつけて何事ぞという大津波警報が発令されアナウンサーのけたたましい連呼に終始していた。津波の到着予想が発表され、海岸沿いの画像が映し出されてこれは18時以降にも続くことになり、正月番組はことごとく放送中止になった。神戸市の知人に後で電話するとこちらも揺れていたよとのこと。能登半島では震度7。直下型で最近の揺れから継続されていた。現在も350名以上の行方不明者、珠洲市、輪島市など被災者は,かなりの数に上る。犠牲になられた方々には心よりご冥福をお祈りするとともに苦難の生活にある被災者の皆様には何とか、一日も早い救助支援の実現を祈念しております。
震災、航空機事故、さらにはウクライナやガザでの戦争に心痛める日々、千曲万来余話としては癒しの音楽を求めたい。「アルハンブラ宮殿の思い出」ギター音楽名曲中の名曲、そこで歴史を調べることにした。宮殿は南スペインでアンダルシア地方グラナダ郊外。イベリア半島はヨーロッパとアフリカが地中海を抱いていて古くはムーア人の生活が有り、イスラム教圏内からキリスト教へと歴史は展開している。カトリック世界が伝えられたのは15世紀末で、既にイスラム時代から「アルハンブラ」の赤い城は13~14世紀に建設されていた。
ギターという英単語は、ターの語音に強勢があり最初に記憶される学習事項、日本語はもともと中国語の「四声」という抑揚の影響を受けていて、アクセントは抑揚型であり、強弱「ストレス」のアクセントとは異なる。6本の弦で開放弦は、低い方から「ミラレソシミ→ほいニトロホ(和名)」という音程で上がる。古くはルネッサンスやバロック時代の「リュート」属なのだがスペインの古来の楽器に歴史は交差しているが、共鳴弦を持たない。クラシック・ギターの先祖はヴィウエーラという13~16世紀の古い楽器で最古のギター作品はミゲル・フェンリャーナ作曲(オルフェーニカ リラ)1554年。近代ギター奏法の原理を確立したディオニシア・アグアドは1825年に教則本を著作。なおジャズなどでも使用されるエレクトリク・ギターは、1930年代に誕生している。指板にはフレットといって金属が埋め込まれ、第1、2、3弦はガット羊腸製、第4、5、6弦は銅巻きの絹糸、最近では金属製のスチール弦が一般化。胴体は共鳴する表板にホール響口があり、表板は数本の力木ちからぎを備えている。楽器の胴体、すなわち共鳴板を鳴らす以外は身体が触れていても問題はない。
作曲者フランシスコ・タレガ1852~1909は歴史に残る偉大な演奏家でもある。フェルディナンド・ソル1778~1839はバルセロナ出身、パリで活躍した。ケルビーニと同世代で作曲家でもあり演奏者でもあった。タレガの弟子にアンドレアス・セゴビア1893~1987リナレス生まれがいる。アントーニオ・トーレスやアルバート・アウグスティンらのビッグネームとともにこれら5人はギター音楽を愉しむ上での立役者といえる。
アリス・アーツ1943年生まれでピアノやフルートを学んだあとに13歳でギターに才能を発揮。イダ・プレスティやアレクサンダー・ラゴヤ、ジュリアン・ブリームらに師事している。ダリウス・ミヨーに作曲法を学び、コロンビア大学で学位を修得している。彼女最初のメリディアン・レコーディングでは、使用楽器ラ・レオーナ1858年製でメーカーはドン・アントーニオ・トーレス。開始に華やかな音色を披露するが、しっとりとしたトレモロは実に円やかで胴鳴りは張りが有り豊満であたかもミケランジェロのダヴィデ像を思わせるスターチュー彫像の様な印象、幸せな音楽の時間となり満たされる・・・