千曲万来余話その657「ヴェルディ曲死せる者への典礼、盛大にして厳かに・・・」

 令和4年に物故した音楽家、デール・クレベンジャー1/5、ワルター・バリリ2/1、大町陽一郎2/18、小出信也2/22、アンネローゼ・シュミット3/10、ラドゥ・ルプー4/17、野島 稔/5/9、ウイリアム・ベネット5/11、サイモン・プレストン5/13、テレサ・ベルガンサ5/13、植村泰一5/16、金昌国7/15、佐藤陽子7/19、アリス・アーノンクール7/20、三上明子9/24、イェルク・フェルバー9/15、野田暉行9/18、一柳 慧10/7などなど多数でまだ他にもいる。
 ジョセフィン・ヴィズィー2/22メッゾソプラノ1930.7/10ロンドン南部ベッカム生れで1975.4キングズウエイホール録音になるレクイエムは不滅の名盤として輝かしい光を放っている。彼女はゲオルグ・ショルティのもと1955年ロイヤルオペラハウスでオクタヴィアンとしてデビュー。サロメ、ピーターグライムズ、ファルスタッフ、カルメンに出演(レコードイヤーブック2023逝ける主な音楽家、鈴木淳史参照)。コヴェントガーデン、ザルツブルク、ラ・スカラ、グラインドボーン、メトロポリタン、エディンバラとベルリンでベルリンフィル(カラヤン指揮)、ボストン響(ラインスドルフ指揮)、ニューフィル(シュリーニ指揮)、BBC響(コリンデイヴィス指揮)他にヴェルディ曲レクイエム(バーンスタイン指揮)など活躍を見せ1973年春には歌劇タンホイザーでヴェーヌス役、1974年秋にはパリでジュリーニ指揮ミサソレムニスを歌っている。
 レクイエムは「死者のためのミサ曲」、入祭唱レクイエム、エテルナム、ドナエイス、ドミネ・・・主よ永遠の安息を与えたまえ、絶えざる光りが、彼らを照らさんことを。キリエエレイソン、クリステエレイソン、キリエエレイソン・・・神よ憐み給え、キリストよ憐み給えと厳かな雰囲気で歌い始められる。第2曲はディエスイレー、ディエスイラー、怒りの日、その日こそ ダヴィドとシルヴィラの予言のとおりこの世が灰燼に帰すべき日なりと、盛大な音量の音楽へ展開する。共演ソプラノはヘザーハーパー、テノールはカルロビーニ、バスはハンスゾーティーン、ロンドンフィルハーモニック合唱団、管弦楽はロイヤルフィルハーモニック、指揮者はカルロス・パイタ(アルヘンティーナ)1932.3/10ブエノスアイレス生れ、ピアノと音楽理論を学び当時、歌劇場に登場したウィルヘルム・フルトヴェングラーに影響を受け、ポーランド人のアルトゥール・ロジンスキーに指揮法を学びF氏にも教えを乞うている。1953年フィルハーモニック、ラディオ国立アルヘンティーナ・オーケストラなど指揮している。ヨーロッパ登場は1966年ベルギー放送のためや、フランス国立管弦楽団、ブルガリア、ポルトガル、ルクセンブルク、西ドイツ、チェコスロヴァキア、オランダなど共演、1969年にはロイヤルフェスティヴァルホールでニューフィルハーモニア管弦楽団を指揮している。
 彼の指揮はドラマティックな解釈を披露している。ディエスイーレ、ディエスイーラでのバスドラム大太鼓はLPレコード史上、好適な録音が成されていて比類ない。和声ハーモニーの扱いにおいて、根音が意味深くとらえられていて、主張が有る解釈をしている。ソプラノとメッツォの二重唱においても、歌詞テキストが入念に押えられていて意味深い。アニュスデイ平和の讃歌、世の罪を除きたもう神の子羊。
 リベラメ ドミネ デ モルテ エテルナム主よ われを許し給え、天と地の震える恐ろしい死の日から救い給え。永遠の安息を彼らに与えたまえ 彼らの上に永久に輝く光を・・・
 人の死は、固有名詞を消したとき、全ての死者に対して永遠の安息を祈る・・・2022年は戦争が起こされたり銃撃事件が起こされるなど歴史に刻まれる出来事が続いていた。周りのものとしてはただひたすらに、安寧を祈らずにはいられない・・・