千曲万来余話その624「ストラヴィンスキー7重奏曲1953自作自演モノラル盤・・・」
今年の冬は雪が遅い。札幌の師走半ばで積雪ゼロ、冬季の降雪量は一定程度だろうから、このあとを想像するに何やら憂鬱、COVID19感染者数は激減しているが。
ステレオ録音には定位といって左右中央やら奥行き感が設定される。ところが、モノラル録音では、マイクロフォンに全て正対していて、その楽器からの距離感のみ感ぜられる。イーゴリ・ストラヴィンスキー1882.6/18~1971.4/6ロシア人作曲家、1914年にスイス移住、1945年合衆国国籍取得している。バレエ三部作、火の鳥1910年、ペトルーシュカ1911年、春の祭典1913年という原始主義バーバリズム代表作の第1期、そして作風はデュオニソス的からアポロン的へ移行したと評される第2期は新古典的とされる。兵士の物語1918年やプルネチルラ1919年、オラトリオ・歌劇オイディプス王1927年、詩篇交響曲1930年そして3楽章の交響曲1945年などこの期の終幕は、グランド・オペラ放蕩息子のなりゆきが創作された。第3期、1952年7月から1953年2月にかけて作曲されたのが7重奏曲で初演は、1954年1月23日、ワシントンD.C.で指揮者指揮による自作自演として公開されている。この録音盤ではデイヴィド・オッペンハイム:クラリネット、ローレン・グリッケン:ファゴット、ジョン・バロウズ:ホルン、ラルフ・カークパトリック:ピアノ、アレクサンダー・シュナイダー:Vn、カレン・タットル:Vla、バーナード・グリーンハウス:Vcというメンバーで錚々たるビッグネイムがズラリである。
曲はトゥッティ全奏で開始、すなわち、指揮者無しでも可能なのだが、居た方が楽だろうというまでである。雲行きとしては、第2部でパッサカリア風の主題が奏されてシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンらの十二音音楽の様相を呈する。新ウィーン楽派とはアルノルト・シェーンベルク1874~1951、アルバン・ベルク1885~1935、アントン・ウェーベルン1883~1945らを指している。無調性アトナリティの音楽から1921年にSh氏は高らかにドデカフォニー音楽を宣言してその優位性を確立した。Sh氏は1951.7/13ロスアンジェルスにて死去、St氏翌年7重奏曲作曲に取りかかっていたことになる。第3部のジーグは、フーガの手法が取り入れられていて軽快、全曲演奏時間にすると12~3分の佳品である。
この曲は室内楽でありながら、ピアノあるいはハープシコードを必要とするためか、演奏機会の少ない音楽だが、才気煥発、ストラヴィンスキーの面目躍如たるものに仕上がっている。アンサンブルのむつかしいだろうという予想は、容易である。
さて、この曲の楽器配置ベストセッティングは、如何なるものか? 聴いていて考え込んでしまったものだが、セプテット、ベートーヴェンを思い出したとき、ひらめきが有った。コントラバスをピアノに置き換えると想像は容易である。弦楽3部は、チェロを中心にして下しも手Vn、上かみ手にVlaという配置は最初に決定する。下手のところにピアノ、対称して上手にホルンという設定をして中央にファゴットとクラリネットをセッティングすると左右対称完全である。
作曲家は、楽器配置を指定する時もあるがそうでない場合が多数である。すなわち、演奏者側が配置を決定するものだが、以前にFM放送で、アンサンブルの楽器配置、プロデューサーが指定したと聞いたことが有る。盤友人の発信は、演奏者たちが安易に下手側高い音、上手側低い音という固定観念に対するアンチテーゼである。大体、弦楽四重奏曲のステレオ録音は圧倒的多数派としてVnをそろえているものだが、現代はVn両翼配置、ダブルウィングが復活した演奏機会が増えている。舞台中央でチェロとアルトが中低音域を演奏して第1と第2Vnがステージに両翼配置するのは不知火型といえる・・・