千曲万来余話その618「Rシュトラウス曲ツァラトゥストラはかく語りき、ステレオ最初期録音・・・」
30日土曜日札幌地方は雲一つない終日の晴天、午後5時ころには西南低空に金星が輝いていて、南に目をやると木星やその西側には土星という惑星が鮮やかである。夜半の天頂には、ペガススの大四辺形、以前は大方形とかいわれていた星四つが目にされる。秋の夜長は東南の空にオリオン座、三つのベルトがロマンである。
歴史を紐解くと1958年8/1に日本ビクター、RCAレコードから国内ステレオレコードが発売されている。ということは、ステレオ録音はいつ頃のことになるか?議論のあるところだが、盤友人の所有する最初期ステレオ録音レコードの一枚は1944年秋、ワルター・ギーゼキング独奏アルトゥール・ローター指揮ベルリン国営放送管弦楽団によるベートーヴェン作曲ピアノ協奏曲皇帝。同年カラヤン指揮ブルックナー交響曲8番の4楽章だけというのもある。これらは確かにリリースは1978年だ。どういうことかというと、録音はステレオであっても、一般にはステレオLPレコード対応カートリジの普及は1958年まで待たなければならないからである。録音方式は開拓されていても、普及するまでタイムラグがあるということ。ちなみに、フリッツ・ライナー指揮するシカゴ交響楽団による「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30は、1954年3/8ステレオ録音でレコードリリースはVICS1265で1967年〇Pプリントになる。
交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」初演は1896年11/27フランクフルト作曲者自身の指揮による。開始は超低音Cはパイプオルガンにより、その自然倍音の中から荘重なトランペットが姿を現し、全奏トゥッティに高揚してティンパニーが華麗に乱打しオルガンのフェルマータで序奏が区切られる。映画2001年宇宙の旅でスタンリー・キューブリック監督が採用したのはカラヤン指揮ウィーン・フィル演奏1959年録音のディスクだった。多分、この超低音をいかに再生するかが、ハイファイオーディオのテーマとなり、もてはやされたものである。
この曲はLPレコードで、片面15~6分位で両面のものになる。ステレオ録音により実現されたことは、AチャンネルとBチャンネルの音源の他に中央の定位ローカリゼイションが感じられる。ライナー指揮したLPレコードでは、左側にVnとチェロ、コントラバス、木管楽器が定位して右側にはVn、アルト=ヴィオラ、トランペット、トロンボーンそしてホルンが定位する。それで中央はというと、オルガンやティンパニーが定位して独奏ヴァイオリンや独奏チェロは左側に定位する。これは、極めて重要な指摘になることだろう。なぜなら、後年62年ライナー指揮するステレオ録音は、弦楽部は左側高音域、右側低音域という多数派形成するステレオ録音に展開を見せている。どういうことかというと、指揮者右手側低音担当楽器配置という録音技師らの要請ともいえるステレオ録音が典型的ということになる。
低音担当楽器が指揮者右手側に配置されることは、土台が右側になり左側へ音楽は向かうというお相撲の横綱による右腕差し上げる雲竜型といえるのだろう。ヴァイオリンダブルウイングというのは、不知火型で両腕を左右に広げる配置で、中央に低音を配置することによりオーケストラは聴衆に向かい演奏を展開するものとなる。第2Vnが右スピーカーに聴こえることは音楽的に観て極めて意味深い事である。
「ツァラトゥストラ」という言葉、世界史では「ゾロアスター」拝火教というもので、モーツァルト歌劇魔笛に登場するザラストロという人物とつながりは、想像するに難くない。レコードのB面で演奏されるニーチェ著作になる科学、救済、ダンス、夜の歌などワルツになって彼の哲学は想起される交響詩の面目躍如である。ライナー指揮する音楽は切れ味鋭く、不滅のステレオレコードなのだろう・・・