千曲万来余話その596~「バッハ2Vnのための協奏曲、すでに40年経過して・・・」
5/26水曜日午後8時頃には赤銅色した満月を迎える皆既月食。今年一番地球に近いことによる最大限見かけ上の月で、太陽から地球延長戦上で影の中に位置することによる。天候に左右されて観測できるかが決まる。この千曲万来余話のサイトは8年目を迎える。読者皆様のおかげでここに至るのだが、価値は独自の情報発信が足りているか?だろう。オーディオシステムを改善して、ということは札幌音蔵とともに、進化ならぬ「深化」をはかり到達した地平である。
ヨハン・セヴァスティアン・バッハ1685.3/21?アイゼナハ生れ~1750.7/28ライプツィヒ没は、50年3~4月に英国人眼科医ジョン・テイラーに手術を受けていたが失敗し失明したといわれている。1720年7月頃最愛の妻マリア・バルバラを失うことになる。このケーテン時代、宮廷楽団との出会いからブランデンブルグ協奏曲ほか、無伴奏Vn曲など名作誕生の年になっている。そんな中2つのヴァイオリン協奏曲ニ短調BWVバッハ作品番号1043が作曲された。
独奏者が二人いるという協奏曲であるのだが、1982年コピーライトのオワゾリール盤DSDL702、録音当時40歳クリストファー・ホグウッドが指揮をし、ここでは室内オルガンを弾いていて二刀流である。古楽奏者デヴィド・マンロウとともにロンドン古楽コンソートメンバーであり、73年にアカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックAAMを結成してここに至る。第1と第2Vn3名ずつ、アルトとチェロ2名ずつ、コントラバス1名という編成規模。鑑賞して気が付くことは、第1Vnヤープ・シュレイダーは左スピーカーに定位して、第2Vnクリストファー・ハイロンズが右スピーカー側に位置している。
今までこの曲のLPレコードでステレオ録音されていた場合、右スピーカーは低音成分すなわち、コントラバスが定位しているために第1と第2独奏者の分離は、明快性に欠けていたといえるだろう。すなわち、Vnという楽器を、演奏する都合上、並べて配置する従来の演奏スタイルでは、未解決の音楽といえるのである。現代、多数派のスタイルはVnを舞台に開いて配置する旧来のダブルウイングをタブー視した並べる配置だから、その欠陥を誰も指摘することは無かったのだろう。Vnを並べることにより自然、コントラバスは舞台上手側に位置して、この問題を無視していたといえる。残念なことに、ホグウッドはVnダブルウイングに到達するも、コントラバスは舞台上手、盤友人にとってこの指摘せざるを得ない。第1Vnとチェロ側にコントラバス配置を必要とする。左スピーカーにバス配置はなんの問題もなく、右スピーカー側に第2Vnが配置されて、初めて作曲家バッハのイメージに合う音楽は、展開される。
40年前に録音されたレコードを、盤友人が再生に成功するためには、それ以上の時間を必要としていたことになる。どういうことかというと、再生するグレード、すなわち、受け入れる態勢はオーディオシステムのグレードと比例して、左右分離のセパレイション力を備えると無しに、鑑賞は成立しない。システムの高みが、それ相応のポテンシャルに到達していなければ、発揮されない音楽情報といえる。システムは組み立てただけでは、追い込むことなしにポテンシャルを発揮することはできないのである。オーディオとはそういうもので、だから奥が深いと言われる所以である。
オーディオでは、環境条件が整うこと、経済条件が整うこと、それより何よりも、鑑賞者のモチベイションが問われる、そういう世界なのであろう。音楽は、分かるか分からないか?ではあらずして、感動するか否か、感性の世界、スピーカーで再生する世界こそ、記録者最高の能力発揮された世界なのだから、再生する喜びは無類・・・