千曲万来余話その584~「ヴィヴァルディ四季、魅力満載のホグウッド指揮・・・」
ストラヴィンスキーの作曲に比較して、ヴィヴァルディのそれはワンパターンという評価は誤解を招くおそれがある。いかにも下等というレッテルであるのだが、著しく浅薄な判断に過ぎないだろう。「和声法と創意への試み」と訳されるのが今までなのだが、「創意」というのは「インヴェンション」であり、「2声部楽曲」の誤訳だろうと思われる。アントニオ・ヴィヴァルディ1678年頃ヴェネツィア生まれ~1741.7/28埋葬ウィーン。父からヴァイオリンと作曲の手ほどきを受けている。1709年には女子音楽学校の教師になり、1716年に合奏長、のちに合唱長にも就任している。作曲はアルビノーニ、マルチェルロなどの影響を受けている。弦楽器や管楽器などの協奏曲は多数あり、それは急速、緩、急の三楽章形式による。調性も主調、属調、関係調、主調というようにすすめられる。
「四季」はRV269.315.293.297作品番号8の1-4まで春夏秋冬という構成。それぞれに作者不詳のソネット14行詩が添えられている。~春が訪れ、小鳥たちは華やかに、喜ばしく歌声で感謝し、西風の息吹に泉は柔らかく囁きながら湧き出でる。~描写音楽ともいえる春の第二楽章などでは、犬のなき声のような擬声音楽が奏される。
クリストファー・ホグウッド1941.9/10~2014.9/24はケンブリッジ大学で古典学、音楽学を修得する一方、レオンハルトにハープシコードを師事している。1970年前後には、夭折の天才古楽器奏者デヴィド・マンロウと共にロンドン古楽コンソートの設立メンバーとして参加、活躍し1973年にはアカデミー・オブ・エンシェントミュージックを結成、チェンバリストや指揮者として活動、ピリオド楽器「時代楽器」のレパートリーをバロックからハイドン、モーツァルト、さらにはベートーヴェンにまで拡大していった。古楽にとどまらずにホグウッドの指揮はモダン楽器でストラヴィンスキー、コープランド、ティペット、オネゲルなど現代作品にまで及んでいる。
1982年12月キングズウエイホール録音、ヴィヴァルディの四季は、コントラバス1、チェロ2、アルト3、第1、第2ヴァイオリンがそれぞれ4という編成、さらに、春と秋ではバロックギター、ハープシコード、夏と冬では、ポジティフ室内用オルガンとアーチリュートが通奏低音として加えられている。独奏ヴァイオリンはそれぞれ交替して、春はクリストファー・ハイロンズ、使用楽器デューク、c1775、夏はジョーン・ホーロウエイ、楽器マリアーニ1650、秋はアリソン・バリイ、楽器ロジェリ1699クレモナ、冬はカトリーヌ・マキントッシュ、楽器ロウランド・ロッス1978アマティモデル。使用楽器のそれぞれは、音色や鳴り方に特徴があり、聴くものを飽きさせることはない。
オーディオの愉しみ方として、グレードアップの条件はあくまで原音忠実ハイフィデリティにある。それはあたかも、カートリッジ、ピックアップの介在が透明化して録音テープの音感にせまることである。仮想アースの採用は、スピーカーのマイナス端子に接続することにより、飛躍的な向上を見せることになった。透明感、高音域から低音域に渡りシグナル信号の音圧が高まりをみせて、エネルギー感を向上させる。AとBのチャンネルセパレイションが確かになるということは、ホグウッド指揮の採用しているヴァイオリン両翼配置が効果抜群といえる。左右のスピーカーに第1と第2のヴァイオリンが定位する効果は、まさに作曲者の時代の効果的配置であって、近代ステレオ録音が採用していた、ヴァイオリンを揃える配置とは対照的な弦楽アンサンブルの醍醐味を再生してやまない。オーディオの道を歩み、ホグウッド指揮の世界を再生する悦びは何物にも代えられない音楽の歓びそのものといえるかもしれない・・・・・