千曲万来余話その527~「バッハ、クリスマスオラトリオBWV248、音楽の宇宙を聴く・・・」
オラトリオ宗教的題材を劇的に表現した大規模声楽曲、管弦楽合奏とティンパニー、合唱、独唱者たちとエヴァンゲリストという進行役の朗読調歌唱により演奏される。「歓喜して小躍りせよ」ヨハン・セヴァスティアン・バッ1685~1750が1743年のクリスマスから翌年1月6日にかけて初演されている。バッハはライプツィヒ聖トーマス教会、聖ニコラウス教会の両方を午前と午後に往復して、この曲を演奏している。今ではLPレコード3枚で鑑賞することができる。
シュトゥットゥガルト聖歌隊、バッハ・コレギウム聖歌隊、アーリン・オージェSp、クリスタ・ムッケンハイム、ユリア・ハマリAlt、ペーター・シュライヤーTen、ウォルフガング・シェーネBass、合奏団3人のトランペット、ハーネス・ロイビン、ウォルフガング・ロイビン、ベルンハルト・ロイビン、ティンパニー、ノルベルト・シュミット、2人のホルン、ハーネス・ロイビンとウォルフガング・ロイビン、2人のフルート、ギュンター・ポール、シビル・ケラーサンヴァルト、2人のオーボエ・ダモーレ、ギュンター・パッサン、ヘッダ・ロートウェーラー、2人のオーボエ・ダカッチャ、ディートマール・ケラー、茂木大輔、2人のファゴット、クルト・エゾルト、ラルフ・サボウ、首席コンサートマスター、ワルター・フォルケルト、独奏第二Vn、ウィリ・レーマン、チェロ、ヤーコバ・ハンケ、コントラバス、ハルロ・レンツ、チェンバロ、マーティン・ガリング、オルガン・ポジティフ、マルタ・シュスター、ミヒャエル・ベーリンガー、ハンス・ヨアヒム・エルハルト、指揮ヘルムート・リリンク1984年4-6月録音
音楽というと、正確な演奏が目指されていて、それで良しとするものである。ところが、このクリスマス・オラトリオの音楽と云うと、イエス・キリストの生誕が取り上げられたものであり、歓喜よろこびこそ主たるテーマ題材だろう。実際の演奏会で鑑賞するのだが、その歓びの感じられない演奏に出会うものだが、このLP録音には「歓喜」に溢れた演奏が記録されていて、裏切られることが無い。
ペーター・シュイヤーの清々しい歌唱には、いつも感動させられる。テノールというのは音域が高い声で、しかも、のど声ではなく身体全体で発声するから、聴いていて心の底から引き込まれる。クラシックの音楽会では、拡声器が使用されることはない。すなわち、発声こそ生命であって、その場の空気の振動感こそ音楽なのであり、スピーカーに向かうオーディオは、電気により駆動された再生機プレーヤーとアンプが、スピーカーにより音楽鑑賞を体感させる。空気エアが、音楽鑑賞の肝であり、その振動感こそ生命である。
その再生に適う音楽家、ソプラノのアーリン・オージェ、彼女は1991年札幌・芸術の森に登場していて、モーツァルト・レクイエムの独唱者を務めていた。ステージの裏口で彼女とすれ違ったことのある盤友人は当時PMF教育国際音楽祭で合唱に参加していた。指揮者はマイケル・ティルソン・トーマスでアルト独唱はクリスタ・ルートヴィヒというビッグネイムだった。後年1994年だったろうか、マイケルが指揮してPMFオーケストラは第九の終楽章を演奏したことがある。フルートの首席にはウォルフガング・シュルツが出演していて、そのリハーサルの時から彼らの集中力に驚いたものである。その4月にアーリン・オージェは急逝していたのだった。指揮者マイケルの胸中は如何なるものだったのか、そんなことを想いつつ、彼女の元気なころの歌唱を再生して、活き活きとしたソプラノの音楽を鑑賞できることは、感謝するしかない、それほど懸命な歌声に今年1年を想う・・・皆様、どうか良いお年をお迎えください。