千曲万来余話その525~「シューベルト、偉大交響曲ハ長調ケルン放送交響楽団の実力・・・」
コンサートホール・キタラはその歴史を二十年以上有する札幌にある管弦楽の聖地と云える。ギリシャ語のギターを思わせるそのネイミングも素敵だが、一度、来たら、やめられなくなるという駄じゃれ的な名前だし、何より、東京の赤坂・サントリーホールと同じ思想、ワインヤード方式の採用された音楽会場である。世界に誇る札幌コンサートホールは、すでに世界最高峰の管弦楽団たちが演奏を披露している会場だ。指揮者ワレリー・ゲルギエフはロシアで同じホールを建設させたという有名な話題もあるし、ウィーン、ベルリン、ロンドン、パリなど数多く国際都市から札幌にそのアンサンブルを披露するホールとしての機能を発揮している。
そのワールドオーケトラシリーズ、今年はケルン放送響楽団が招へいされていた。指揮者はマレク・ヤノフスキー1932.2/18ワルシャワ生まれ。彼は1983年初めてケルン放送交響楽団に登場、以来ヒンデミットの作品を始めとして、ベートーヴェンの交響曲の録音をリリースする予定がある。キタラホールでは夕方五時から公開プローベが企画されていて、リハーサルの冒頭から聴衆の一人として参加することができた。まず、リハーサルの開始に当たり、セッティングに加わっていた裏方のメンバーの一人ひとりが紹介されて団員から拍手、そして続き楽団員の一人二人が拍手を受けていた。遠くからの判断で正確ではないのだが、誕生日にあたるメンバー紹介のような雰囲気であった。演奏者は全員が時刻を目指して着席していていたのだが、その中心でヤノフスキーは先に指揮台に着席していて、明らかにオーラを発している感じがしたから、その夜の演奏会、すでに雰囲気は形成されつつあったようである。コントラバスは8名編成、チェロ10、アルト12、第2Vn14、第1Vn16という弦楽5部編成。木管は4管というオリジナルに対する倍管編成。トランペット2、トロンボーン3、ホルン4そしてティンパニというフル編成。演奏会はベートーヴェンの第7番イ長調そしてシューベルトのグレート第8番ハ長調は2管編成。その昔、グレートというニックネイムの交響曲は第9番であった。ところが7番は欠番であったために7(9)番ともいわれていたのだ。つまり、第8番はロ短調「未完成」であった。CD主流の時代になり、第7番未完成、第8番グレートというのが現在のところである。LP時代の第8番と云うと「未完成」であった盤友人にとって、偉大交響曲ハ長調D944は第9番が馴染みである。
未完成という交響曲は、2楽章しか完成していないことにより命名。それでも完成しているという感じはする。8というナンバーは無限大とリンクしていて魅力があるし、第9番は最高級というグレートナンバーに相応しい。フランツ・ペーター・シューベルト1797~1828の生前に演奏は未発表であって、その作品自体、ブルックナーという後期ロマン派の音楽を先取りした音楽になっている。演奏時間も50分余りの長大な作品。第3楽章の音楽は舞曲風、第4楽章はファンファーレで開始され、長大なソナタ形式による。ソナタ形式と云うのは、男性的な第一主題、女性的な第二主題の提示部、展開部、再現部、終結部という形式で作曲されている。ロマン派という永遠なるものに対する憧れの芸術は、古典派という確固たる形式に続く、人間性の発露として、現代人にも受け入れられる音楽といえる。
チェロ奏者たちのボウイング弓さばきを見ていると整然としている上に、コントラバス奏者の動きと一致する時、そのダイナミックさに視覚的に感動を覚える。
ケルン放送交響楽団は1947年創立、すでに歴史ある有力なオーケストラで、ベートーヴェンとシューベルトという深遠な世界を記録している。ギュンター・ヴァント1912.1/7エルバーフェルト生~2002.2/14スイス没はグレート、ケルン放送交響楽団を指揮し1977年頃録音、旋律線をくっきりと浮かび上がらせた質実剛健ともいえる青春のエヴァーグリーンである。オーボエ首席奏者として宮本文昭さんの音色(ヘルムート・ヴィンシャーマン譲りのヴィヴラート)が思い浮かぶもののクレジットは特にあるものでもない。とにかくすべてが生き生きとした躍動的な演奏のレコードだ・・・