千曲万来余話その503~「テレマン、通奏低音とブロックフレーテによる室内楽の名演・・・」
リコーダーという縦笛は、息を吹き込みながら指孔を押さえたり開いたりさせることにより演奏する。このとき、息の圧力と楽器共鳴する関係や指使いの妙技性に、面白味が発揮されて、その空間に鳴り響く音楽は技術と高い精神性の発露として時間藝術の真髄を経験することになる。
バロック時代は、バッハやヘンデルの他に、テレマンというビッグネイムがある。バロックから古典派の移行期にドイツを代表する作曲家ゲオルク・フィリップ・テーレマン1681~1761はライプツィヒ大学で法律を学びながらも音楽的才能を開花させてのちにハンブルクで活躍した。聖職者の家庭に育ちオルガニストの地位から、既成の枠を超えた活動をした。ゾーラウ、アイゼナハ宮廷、フランクフルト、1721年にはハンブルク市の音楽監督に就任、宗教音楽のみならず世俗音楽の作曲家として当時から有名な存在であったといわれている。平易な音楽、力強さや華麗な技術を遺憾なく発揮させる音楽づくりに貢献している。絶大な人気を博し、各国の器楽様式とジャンルを百科全書的にまとめた「ターフェル・ムズィーク」「忠実な音楽の教師」ほかに受難曲、教会カンタータ、ハンブルク・オペラなどなど、イタリアにはヴィヴァルディ、ドイツにはテレマンといわれるほどの作曲家である。日本ではバロックというとヨハン・セヴァスティアン・バッハが有名でも、ドイツでは当時から人気の作曲家として活躍していた。
リコーダーは、音域的に高いソプラノ、ソプラニーノがあり、中音域ではアルト、テノールそして低音域ではバスという多種類の旋律を担当する吹奏楽器だ。合奏するのは通奏低音、数字付き楽譜をもとに即興的に低音声部を担当するチェンバロなど鍵盤楽器と共に、ファゴットやチェロが最低声部を演奏し合奏する。ドイツ語によるとゲネラルバス、イタリア語ではバッソコンティヌー、英語ではトゥ(ス)ルーバスといわれる。三種の楽器による演奏は、ハイドンやモーツァルトではピアノトリオ、すなわちヴァイオリンとチェロ、ピアノの音楽へと発展した。フランスではラヴェル、イギリスではジョーン・アイアランドに名曲があり歴史としてその源流に当たるのがテレマンのトリオ三重奏になる。
ミカーラ・ペトリ1958.7/7コペンハーゲン出身のリコーダー奏者で、演奏会に足を運んだ人は、本当に美しい人、その美貌に感動しそして天才的な高い技巧に圧倒されるという。リコーダーは小学生でも演奏可能であって、なおかつ、長い演奏経験を積み重ねると、フルートやヴァイオリンに比肩する楽器に変容する。一般にか細い音色と思われがちなのだが、どうしてどうして、突き抜けるような音から、柔らかい音色まで幅広い音楽を表現する。チェンハロ(ハープシコード)やチェロの音量に負けることなく、心に届く音楽を演奏する楽器である。リコーダーで合奏するのも楽しく、独奏する旋律楽器としても抜群である。ペトリの音楽性は、確実な技術、幅広い表現、豊富な演奏経験と云う三拍子揃ったリコーダー音楽を提供してくれる。その技術と魅力は多数のLPレコードで鑑賞できることで、コレクター冥利に尽きると云えるだろう。弦楽器や鍵盤楽器のほかに、吹奏楽器としてのリコーダーは、音楽の鑑賞として幅を広げてくれる。器楽の鑑賞は、自分が演奏するのもそうなのだが、かなわぬ演奏を聴くことにより鑑賞行為を高みにまで拡幅させるものである。受け身としての鑑賞を、一体感を共有することにより、能動的に参加するという、なかなか微妙な世界が待ち受けている・・・・・