千曲万来余話その500~「R・シュトラウス、アルプス交響曲とモノーラル録音再生・・・」
LPはモノーラル録音による世界からステレオ録音のものへと進化している。1944年頃既にドイツでは開発されていたものであるけれど、1955年頃を境にステレオ録音は定着している。カール・ベーム1894.8/28グラーツ出身~1981.8/14ザルツブルク没は、グラーツ大学で法学修得の経歴を持つ異色の指揮者、ウィーンで音楽理論を学んでいる。彼はドレスデンでリヒャルト・シュトラウスの作品初演指揮を経験している。「無口な女」「ダフネ」。ベームがザクセン州立ドレスデン管弦楽団を指揮したアルプス交響曲(1915年作曲初演)は、1957録音でモノーラル録音後期の優秀録音。
盤友人はおよそ30年余り前、東京都港区浜松町のオーディオショップで手に入れた。当時の価格で1万円。清水の舞台から飛び降りる思いで他に、ハスキルが弾くシューマン、子どもの情景エピック録音のモノと購入。オリジナルLPレコード経験である。なにゆえ、これほどの高額なのか?中古レコードの世界ではゼロの数字が四つや五つ、普通である。オリジナル録音と云うプレミアムは何物にも代えられない価値による。国内LPレコードでモノラル録音と云うと500円くらいの相場、比較にならないものがある。
モノーラル録音には、カートリッジをモノーラル専用の針を必要とする。もちろんステレオ針でも再生可能ではあるけれど、専用針は出力する世界が異なる。左右の広がりこそないけれど、奥行き感は、抜群である。すなわち、金管楽器が舞台奥から吹奏する音楽の上に、手前の弦楽器の演奏は、マイクロフォンの実力が遺憾なく発揮される。だから、扁平ではあらず立体感充分な音源でオーケストラ録音はなされている。この経験は、オーディオ経験をした仲間には共有する感覚と云える。それは、アナログ世界の原点であり、ベーム指揮したアルプス交響曲は、すさまじい力感が記録されている。開始の200秒ほど、日の出の場面では静寂、夜のとばりから時の経過とともに差す一条の日の光を、絶妙に描写している。コントラバスのうねりから、鉄琴の一音まで緊張するひと時は息をのむ一瞬であり、その後に続くブラスの彷徨は光のシャワーを表現するにふさわしい。この感覚は、デジタルとアナログの一線を画するソースである。
ドレスデンの歌劇場管弦楽団はおよそ四百年の歴史を有していて、ウエーバーのオペラ魔弾の射手、初演の歴史がある。とにかく、弦楽アンサンブルの音程、ピッチの正確な感覚は抜群に素晴らしく、管楽合奏の実力は他の追随を許さない、孤高のオーケストラだろう。
古都ドレスデンは第二次大戦で連合国軍の空爆を受けて、大変な被害を受けていてそこから立ち直った歴史は、ドレスデンの底力を発揮した人々の知られざる努力の集積から達成されたものといえるのではないか。かの録音は終戦から12年という短期間で成し得た人々の心底から歓喜の記録といえる。
千曲万来余話は、おかげさまで、500回の折り返し地点を迎えた。五年間あまり時間の経過があり、ここまで至ることができたのは、電子書籍としてこのサイトをご覧になる皆様の存在がある。東京、大阪、名古屋、札幌他様々の地域にわたる。もしサイトアクセス0の日が続いていたら、成立しないブログで、1日に数百のアクセスを経験し、盤友人としてはそのことに感動する日々である。サイト発信する愉びを皆様と共有できる幸福感はなにものにも代えがたい。このサイトで数字を多用する理由は、それが、正確か不正確かの判断材料になることにある。信用問題を抱えてのブログ発信と云うことで、さらに用心して頂上から下る歩み(くだらない話かも?)を発信していこうと思う次第・・・