千曲万来余話その384「至芸、ジョルジュ・エネスクが記録したバッハ、オーディオ論その五」
クラシックは何が好きですか?このように聞くことがしばしばある。それくらいこの世界は、鵺のごとく得体が知れないもの。きのうピアノを聴いて、すごいなあという名演奏に感動していながら、今日はヴァイオリン演奏を聴いて、この演奏をしのぐものなどあるのだろうか等々、心服することはいつもである。
レコードを再生して経験することは、LPレコード、真空管アンプでは片面30分くらいを再生すると、何か音響世界が豊かになるような変化を感じられるということである。
以前、満月の夜は音が良いと発信したことがある。11月04日土曜日は月齢が15.3になるその夜。11月1日は12.3という十三夜。さかのぼるとその新月は10月20日金曜日月齢が0.3、振り返るとその日からスピーカーの鳴りは、豊かに変化していっている。ピークは、今週の土曜日、それを越して11月18日土曜日が月齢29.3で新月、太陰暦でいうところの神無月朔日、10月01日に相当する。この日は音が悪い、という発信をするのは正確ではない。すなわち、スピーカーの鳴りっぷりは満月のころに比較すると薄い音響で、オーケストラの音楽など、楽器の輪郭は鮮明に聞こえるというほどのものである。音が悪いというのは、倍音の印象が薄まるということで、逆に、満月夜はそれが豊かに再生されるということ、ピアノの音楽を再生する時、左手の打鍵は豊かな音響に聞こえるということである。盤友人は、仲間のグループ七人で男声コーラスの練習を定期的に経験しているのだけれど、満月の日は、和音ハーモニーの鳴りっぷりが強めに感じられる。
宇宙の姿を想像したとき、太陽、地球そして、月が一直線の状態になるのが満月夜。そして、さらに詳しく考えると地球自体の自転で太陽に背を向けた時が夜、だから、ここで自転を想像したとき、一日のうち、夕方四時半を過ぎて五時あたりから地球は東側へと回転し続けている。そこで、太陽に対して地球外側へと遠心力が働く状態となる。そのときから、スピーカーの鳴りっぷりは、フカフカ状態になるのだ。つまり、夕方五時から夜の七時過ぎへと、音は良く鳴り出す。
ヨハン・セヴァスティアン・バッハの作品番号BWV1001~1006という六曲は無伴奏、独奏ソナタ、パルティータという音楽、パルティータで、アルマンドというのはドイツ風舞曲からなる曲、その中で第二番パルティータ、ニ短調、その中の第六曲はシャコンヌで、葬送の際の音楽ともいわれている。名曲中の名曲、その一曲だけで15分くらいの演奏時間を要する。ちなみに、ソナタ三曲、パルティータ三曲でそれぞれ、LPレコードでは片面25分くらいの時間、三枚で収容される。ちょうどよい具合である。
ジョルジュ・エネスク1881.8/19ルーマニア、リヴェニ・ヴィルナウ生~1955.5/4パリ没
彼のバッハ演奏は、復刻モノーラルLPレコードで再生すると、その明確な演奏スタイル、奥深い作品解釈、唖然とするほどの微妙なテンポ感ニュアンス、確固たるバッハ演奏における態度、その弓さばきに対して、畏敬の念すら覚えるのは、盤友人だけなのであろうか?
良い音とは何か?それは演奏空間の再生と演奏鑑賞するその空間の一体感にある。
エネスクのヴァイオリン演奏する空気感が横溢するスピーカー、それは透明になり、音場はリスニングルームそのもので、演奏家の魂は再生され、浮遊し始める・・・