千曲万来余話その364「ヨハンナ・マルツィによる近代音楽、10インチ盤」
音楽は、時間の芸術、その歴史的変遷を正確に受け止めることは必要であるばかりでなく、いっそう愉しむ態度でもある。詳しくではなく、正しくということは、大まかな理解が第一歩だ。
現代音楽というのは、正確に言うと、コンテンポラリー、同世代の音楽。それ以前をモダン、いわゆる近代音楽になる。二十世紀を境として、その近くに印象主義という絵画の世界に連動した音楽があり、その前が後期ロマン派、それをさかのぼると、ロマン派、そして古典主義いわゆるクラシックという音楽がある。ざっくり、それ以前に十六~十七世紀のバロック音楽があり、さらにさかのぼると、ルネッサンス期十四~十六、文芸復興の音楽へとつらなる。
ラッソ、モンテヴェルディ(ルネッサンス期の音楽)
スカルラッティ伊ヴィヴァルディ伊ラモー仏バッハ独ヘンデル独 -英(バロック音楽)
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン(古典派音楽)
シューベルト、シューマン、ショパン、リスト、メンデルスゾーン、ワーグナー、
ブラームス、チャイコフスキー、ドボルジャーク(ロマン派音楽)
スメタナ、コダーイ、バルトーク、シベリウス(国民派音楽)
ブルックナー、マーラー、リヒルト・シュトラウス(後期ロマン派音楽)
ドビュッスィー、ラヴェル、ファリャ(印象派音楽)
ストラヴィンスキー、シェーンベルク、ベルク、ウェーベルン、サティー、 ミヨー、
プロコフィエフ、ハチャトウリアン、ショスターコーヴィチ、バーバー(近代音楽)
メスィアン仏ブーレーズ仏ケージ米、武満徹ユン・イサン韓タンドゥン中(現代音楽)
ヨハンナ・マルツィ(1924.10.26ティミショアラ、ルーマニア~1979.8.13チューリヒ、スイス)。イェネー・フバーイ門下、リスト音楽院出身、ヴィヴラートに特徴があり生命力のある演奏が特色で、1947年には、ジュネーブ国際コンクールで最高位、1位なしの第二位を獲得。
EMI、DGなどにモノーラル録音、レコードを多数残している。 ピアニスト、ジャン・アントニエッティとの演奏で、ラヴェル作曲ガブリエル・フォーレによる子守歌、ハバネラ形式による小品、ダリウス・ミヨー作曲イパネマ、これは、バーバリズム野蛮主義ともいえるリズムに特徴のある音楽、ファリア作曲スペイン舞曲、そしてカロル・シマノフスキー作曲、小夜曲とタランテラ作品28-1、2静かな音楽と律動的な音楽を対比的に演奏する。両面で30分ほどの演奏時間で、なぜか良い録音のモノーラル盤。
ヴァイオリンの音色が、古典派とロマン派音楽の後にくる近代音楽において、その可能性が色彩的に拡大されて、湿り気のある輝きというか、夜色に光るヴァイオリンの輝き、ヴィオロンの・・・という感覚がぴったりしている。それもそのはず、ジャン・アントニエッティのピアノが、深くて、渋くて、量感たっぷりの落ち着いた音楽、ミヨーの骨太のリズムも、決して、違和感のない音楽に仕上がっている。マルツィの音楽の一面を語るにふさわしい1枚。