千曲万来余話その343「モーツァルト、サンフォニーコンツェルタンテ協奏交響曲K364の名盤」
ベルンハルト・パウムガルトナー1887・11・14~1971・7・27ウィーン出身で、法学を学びそして指揮をワルターらに学ぶ。1955年頃録音、ウィーン交響楽団、ナップ・デ・クリンらの独奏者たちとモーツァルト、協奏交響曲変ホ長調、ヴァイオリンとヴィオラのためのK364は1779年作曲、 を録音している。 ヴィオラ=アルトは形がヴァイオリンより大き目で、中音域を受け持っている。ハーモニー和声の内声で、そんなに目立つ楽器とはいえない。けれど、人の声の音域に当たり、渋い音色でリズムは後打ちという合奏でも重要な任務を持っている。形がヴァイオリンと似ているということは、なかなか区別がつきにくいという面を持っているということではあるまいか?
楽器の構造で、ヴァイオリンと決定的に異なるポイントは、ハートポスト魂柱の有無である。すなわちヴァイオリンはその働きにより、ある音域の以下で裏板が振動する仕掛けになっている。だから、あのように表と、裏の振動を使い分けているのだが、それはスイッチにより切り替えるのと訳が違って、魔法である。だからヴァイオリンの名技性はそのマジックの発揮によるところが大きい。アルトは、その点でチェロと同一で楽器の胴体の共鳴を聞かせている。
不思議なもので、オーディオ装置の向上は楽器の個性を表現してくれる。すなわち、以前はヴァイオリンも、アルトも似たような弦楽器程度の違いでしかない表現でとどまっていた。ところが、最近のグレードでは、ヴァイオリンとアルトの音色、楽器構造特徴の違いを感じさせてくれるまで、性能が高められている。
コンサートのプログラム編成の要注意ポイントとして、モーツァルトの楽曲をどの順番にもってくるか?がある。すなわち、冒頭に持ってきたとき、師匠といえる方からは、二番目にしたら?というアドヴァイスを受けるという。それくらい、モーツァルトの楽曲は、危険、演奏上でのポイントがあるといわれている。それは、たぶん、リズム、テンポの設定が非常にむつかしいというところにあるのだろうと思われる。その点、ハイドンや、ベートーヴェンの楽曲の方が演奏しやすいといえるのだろう。その点で、パウムガルトーの指揮は、モーツァルト指揮者として、抜群の信頼感を持っているといえる。似た指揮者の名前に、ルドルフ・バウムガルトナーといものもあるけれど、それは、スイス人指揮者ことで、注意が必要である。
パウムガルトナーはザルツブルグ・モーツァルテウム音楽院の楽長を歴任していて、モーツァルト楽曲のエキスパートといえる。ウィーン交響楽団、特にウィーナーホルン奏者による名技が印象的である。耳に残る演奏とは、このフィリップスレコードの大きな特徴のことといえる。