千曲万来余話その308「シューベルト、交響曲未完成をモノーラルとステレオ録音盤で聴く」

彼は私のように指揮をする、トスカニーニは、イタリア人青年指揮者グィド・カンテルリの活躍を目の当たりにしてそのように批評していたと伝えられている。
北イタリア、ミラノ近く西側に位置するノヴァーラ1920年4月27日生まれ、45年からスカラ座などで指揮して注目され、48年にはトスカニーニに後継者と認められていた。アメリカ、イギリスでも活躍して成功を収めていた。フィルハーモニアオーケストラ、オブ、ロンドンでモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーン、ブラームスなど交響曲を録音。ニューヨーク・フィルハーモニックとはヴィヴァルディの四季、NBC交響楽団とはフランク交響曲ニ短調の正規録音がある。
1956年11月24日パリ・オルリー空港、飛行機事故で客死、36歳の若さ、スカラ座首席指揮者に就任直前のことだった。
軽快なテンポ、歯切れ良いリズム感、伸びやかなカンタービレ歌うように、を特徴としていた。
1955年、彼はシューベルト交響曲第八番ロ短調、未完成をステレオテイクで録音を残している。 シューベルトの未完成交響曲は、二楽章しか書かれていないため、未完成というニックネイムで通用しているのだが、音楽としては完成している。二つだけで、続くのは、舞曲などスケッチがあるのだけれど、作曲者は、それを作曲していない。ストラヴィンスキーには、三楽章交響曲がある。だから、交響曲は四楽章であるという固定観念は、ハイドンが確立していることによるだけだ。
第一楽章、冒頭はコントラバス、チェロの低音旋律で8小節ユニゾン斉奏される。ただし、一と二小節目の間にリピート記号がある。これは、ベートーヴェン、ハ短調交響曲第四楽章ですでに見られる書法だ。109小節が第一括弧で、110小節が第二括弧になっていて提示部108小節リピートすると368小節で終了だから、合計476小節で第一楽章は演奏されることになる。
管弦楽法としては、13小節目からオーボエとクラリネットA管で一緒に主題が演奏される。
楽器配置でいうと、オーボエのすぐ後ろにクラリネットがいると、焦点がピタリと合った旋律線メロディーラインとなるのだが、現代主流の配置では、オーボエのすぐ後ろには、ファゴットが座っている。しかし、昭和43年、来日したバンベルグ交響楽団はクラリネットとファゴットの配置は左右逆であった。フルートの後ろにファゴットがいるのは、楽譜の読み方でいうと、作曲者のイメージに近いのではあるまいか?と盤友人は考えている。現在の配置は、大指揮者の影響が大きいのであろう、その意向の流れを汲んでいるのではないか。フルトヴェングラー、カラヤンなどの近代オーケストラ配置、そろそろ、固定観念から脱却の時代ではないだろうか?
トスカニーニに認められた、カンテルリのステレオ録音によると、第一ヴァイオリンの旋律に対して、第二楽章では、第二ヴァイオリンが崩れ落ちる旋律を演奏しているのが、効果的である。なぜなら、左側からではなくて右側からそのように演奏しているからである。ヴァイオリン両翼配置というのは、そのように音楽上の必要条件だといえる。彼のステレオ録音の意義は大きくて、現在、多数の指揮者達はそのことを恐れているようである。最近、それが復活しているのは嬉しい事実だ