千曲万来余話その302「ピアノソナタ第二番イ長調作品2-2、ケンプの全集録音から聴く」

1950年頃に全集録音されたもの、というとモノーラルである。
ステレオカートリッジでも再生は可能であるのだけれど、その音は、不安定であり、モノーラルカートリッジで再生すると、不思議にも充実したスピーカーの鳴り方がする。
CDコンパクトディスクを聴いている方には、なんでそんな手間のかかることをするの?という疑問を持たれるであろう。CDのほうが簡単だ!と思われるのが自然というもの。
アナログ追求のマニアにとって、カートリッジの交換は、儀式であって、あの針圧を取るときのワクワク感は、求道者冥利に尽きる。このサイトを開いている方の中には、肯かれる方もいらっしゃるであろうしまだ経験されたことのない方にとって、知られざる世界、あの針圧6、1gにするか?6,2gにするか?という迷いは、結果、経験する世界が違ってくるから、その迷いは必ずや通過しなければならない儀式なのである。その儀式がないCD、それは満腹感のない食事のようなものなのだ。 ウィルヘルム・ケンプ、55歳頃に録音されたベートーヴェンのソナタ全集、最初のLPセットは、ボックスのジャケット写真に物語がある。ピアノに向かうケンプを、上からの角度で、B氏のまなざしが知らされるアングルで収まっている。ズシリと重みがあるLPレコードのボックスだ。
今までのレコード業界での評論のあり方では、ステレオ再録音のステレオ全集がリリースされると、すでに、古い録音よりステレオ録音の方が、素晴らしい音で、こちらをお勧めするというものになりがちである。
いつも、新しいものを売らんがために、古いものを否定するというのが、この国のジャーナリズム、ワンパターンであった。 2017年、という時間的に云って、冷静に俯瞰することができると、1950年録音と、1964年頃録音のステレオ録音のものとの音色に、違いが感じられる。クレジットが無いので、正確ではあり得ないが、その違いは、メーカーの違い即ち、モノーラルの方がベヒシュタインで、ステレオ録音の方は、スタインウエイであろうと思われる。
その中で、第二番イ長調作品2-2を、初春に繰り返し聴いた。
ソナタ第一番は、ヘ短調、その次はイ長調。これは、ト音記号でいうと、主音の位置が、第一間と第二間への移行がある。作品2-3の第三番はハ長調、第三間に主音は位置することになる。
作品2のソナタ集は、1795年作曲、ヨーゼフ・ハイドンに献呈されている。
開始は軽快で、アレグロ・ヴィヴァーチェ、快速に生き生きと、第二楽章は、ラルゴ幅広く歌うようにゆっくりと、第三楽章、スケルツォ、たわむれるように、おどけるように、アレグレット、やや快速で、第四楽章は、ロンド、グラツィオーソ優美に。 スケルツォ楽章のところは、メヌエット、三拍子の舞曲を新機軸の音楽にしていて、キラキラ輝くような、弾けるような躍動感あふれるものになっている。ベヒシュタインという輝かしい音色にふさわしく、いかにも新しい時代の幕開けにふさわしい音楽になっている。今年は明るい・・・