千曲万来余話その274「バッハ、チェロ無伴奏組曲第二番をアントニオ・ヤニグロで聴く」を掲載。 by盤友人。

昼でも夜でも、スピーカーの鳴りは一定だから聞こえ方は同じであるというのは、錯覚であって、実際、スピーカーの鳴りは、夜の方が昼間よりフカフカである。倍音成分の音圧は高い。
①エレアのゼノンは、云っているそうだ。アキレスは先に歩き出した亀を追い越すことは、永遠に不可能だ!
②或いは、半分を通過する時間は、その倍を通過する時間に等しい!
アキレスは先に歩き出した亀に近づく、その時の時間、亀は先に進んでいる、アキレスはさらに、亀に近づこうとする、その間の時間、亀は先に歩き続ける、さらに、・・・永遠にその繰り返しは続くというわけである。
A地点とB地点の半分をC地点とすると、A地点からC地点まで行って初めてその倍のB地点は決定される。だから、半分の距離を通過する時に、その倍の地点は決定されると云うものだ。
ここに書かれたことは、いうまでもなく、詭弁ソフィスティケイトである。驚くべきことには、TV報道ニュース番組でも、それは放送されていると言える。ある国の首相の言、経済政策で二回の消費税アップを中止決定したことは、選挙で国民の信任を得ているから失政との批判は適当でないという答弁がまさにそれ、おっと、話が横へそれました。増税不可能という経済状態はアレッ?
昼間より、夜の方がスピーカーの鳴り方は良いというと、にわかに、信じがたい御仁も、多分、多数派であろう。これは、経験から言えることである。平成28年9月28日、午後4時頃から電源スイッチを入れて、午後10時までモノーラルLPレコードを再生していた。途中、夕飯の間も通電している。午後8時過ぎくらいから、明らかに、鳴り方は最高度に達していた。
ウエトミンスターレーベルで、1950年代録音のアントニオ・ヤニグロの演奏するバッハの、作品番号1008ニ短調を聴いた。この音楽は、六曲の組曲の中でも歌謡性が強く、パセティックな哀調を帯びた、特色のある一曲となっている。チェロの音響も豊かな印象を与える。
日没という現象を考えてみるに、地球の自転で日本は外側に向いた位置にある。ということは、回転することによる遠心力は最大値を迎える状態である。このことを認識するとき、昼間は太陽に向かった内向きに日本はあるのであって、遠心力は影響していないと言える。だから、札幌音蔵社長KT氏のいう、夜間は電源がキレイだからという理由と相乗効果が成り立っているのであろう。
ものごとを見通すとき、その人には前提条件が先ず、あるのであって、そのことに気が付くと、奇想天外の言説も、理解が可能と言えはすまいか。
王様は、裸だ!と言えるのは、そう見えている人なのではなくて、その前提条件に気が付いた人にのみ言える真実である。ヤニグロの演奏する世界は、ヨハン・セヴァスティアン・バッハの等身大の世界であって、それ以下でも以上でもない、実に美しい音楽である。仕合わせに感謝する。