千曲万来余話その271「レーガーの変奏曲とフーガ、モーツァルトのレクイエム」を掲載。
オーケストラの定期演奏会、その主役というとプロフェショナルの演奏家による音楽会であるという原点を、それとは別な指揮者の意図が浮き彫りにされた第593回札幌交響楽団定期演奏会であった。
マックス・レーガー1873.3.19バイエルン・ブラント生まれ~1916.5.11ライプツィッヒ没
モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ、ピアノソナタイ長調K331第一楽章の主題による管弦楽のための変奏曲とフーガは、ロココ風の音楽から現代音楽の大編成オーケストラまでの音色を愉しむ音楽である。ふだん、なかなか演奏されず、されど味わい深い音楽として一級品である。
当夜の指揮者はマックス・ポンマー1936.2.9ライプツィッヒ出身。オーケストラに対して的確な指示を出し、明快なフレーズをつくり、ダイナミックスも広く名匠である。渾身のレーガー演奏というふれ込みのごとく、大変立派な演奏会を提供してくれたのだが、盤友人としては、いろいろ疑問が解決された定期演奏会となった。9月16日夜。
指揮者の意図その一、
作曲家レーガーの紹介、パッサカリアというオルガン独奏曲、無伴奏合唱曲のアンコール演奏、これらは、それぞれ立派な音楽であり、レーガーを紹介する目的はよく理解されたけれども、オーケストラ音楽の醍醐味が演奏会としては変奏曲とフーガだけであったのは、とても物足りなかった。
指揮者の意図その二、
合唱団の紹介、モーツァルト作曲、死者のためのミサ曲ニ短調K626ジェスマイヤー版の演奏で 編成は女声四十九名、男声四十一名という大人数、オーケストラは、弦楽器、第一ヴァイオリン八、第二ヴァイオリン六、アルト四、チェロとコントラバスそれぞれ三、バセットホルンやファゴット、トランペット二、トロンボーン三、ティンパニー、ポジティフオルガンという小編成管弦楽。
古楽器風な音色のティンパニー、透明感あるチェロ、コントラバス演奏など立派なものであった。だがしかし、第一と第二ヴァイオリンなどのプルト数をかりこんだことにより、大人数コーラスの演奏が、響きが豊かなのものであったのか?疑問である。コーラスのメリスマ的音楽表現が、いかにも非力であったことは、小編成オーケストラであることにより、逆に浮き彫りにされた。
弦楽器の配置問題、当夜は、現代主流の下手側ヴァイオリン、独唱者四人を中央に上手側チェロコントラバス、手前にアルトという高音域と低音域の対比コントラストというアプローチ。
ポリフォニー複旋律音楽で、第一と第二ヴァイオリンを束ねるという発想、演奏を容易にするのは理解できるが、ハードルが下がり、演奏効果としてつまらないものであることが明確になった。 「合唱にしても、声部の配置が、後列男声でバス、テノールとして、前列に女声ソプラノ、アルトというふうに、下手側に外声部、上手側に内声部という配置にしなければ、作曲者的意図の実現にはならないであろうという問題点、合唱指揮者の判断が、保守的な立場に依っている現状は、聴衆の一人として、ブウイングを発しなければ、変化は期待できないものなのか?いつもそう思い会場をあとにする。足取りは重くなると云うものである。バセットホルンの音色は心に沁みたのが唯一の救いであった。