千曲万来余話その260「ハイドンの室内楽、夏に涼味満点のフルート四重奏曲」

ヨーゼフ・ハイドンは35歳1767年の早い頃に、フルート、ヴァイオリン、アルト、チェロのための四重奏曲、作品5を作曲している。
風が吹き抜けるように爽やかなフルートの旋律線、そして弦楽三重奏による明快なメロディーラインを聴いていると、真夏の暑気払いにうってつけである。ひととき、暑さを忘れさせてくれる。 「ウィーン・フィルハーモニー室内アンサンブルのメンバー フルート、ウエルナー・トリップ、アルト、ルドルフ・シュトレング、チェロ、アーダルベルト・スコチッチ、そして、右スピーカーから、ゲルハルト・ヘッツェルトさんの艶やかなヴァイオリンの音色が聞こえてくる。
トリップ教授は、ほかのウィーン・フィルハーモニーの映像から、金属製の楽器を使用しているのが分かるのだけれども、彼の音色には個性があって、木質性楽器の音色のように耳を惹きつける。 このグラモフォン・レコードを聴いていると、フルートの音色は中央に定位している。その奥にはアルト=ヴィオラの音楽が支えている。右スピーカーからは、中央にチェロ、そして右側にヴァイオリンの演奏が繰り広げられている。これは、普通ではない。どういうことかというと、フルートが左側に居るのはその通りなのだけれども、ヘッツェルさんの演奏が右スピーカーに聞こえるのが印象的だからである。これは彼らのアイデアであろう。フルート、アルト、チェロ、ヴァイオリンという配置は、彼らの意匠であり、特筆されなければならないことだ。 第一番ニ長調ホーボーケン番号ⅡD9はプレスト、アダージオ、メヌエット、プレストの4楽章からなっている。
第二番ト長調、第三番ニ長調、第四番ト長調フィナーレは、主題ファンタズィによる変奏曲1-5でできている。
盤友人としては、チェロとアルトの配置を交換するとどうなのか?と考える。チェロの音楽は、左側に支配があると、すわりがよいように感じるのだ。チェロ、アルト、ヴァイオリンと並べてみると、客席から見て左側から低音弦で、右側に高い音域の開放弦が張られることになり、安定感がある。
レコードは、固定されていて、つい、左と右のチャンネルを交換してみたくなる誘惑にかられるのであるけれど、ヘッツェルさんの右側という意向は、否定されてはいけないように思う。 尊重される演奏家達の配慮と共に、チェロ左側というアイデアにこだわりたい気もするから、悩ましくて、暑さも忘れてしまうことになり、いや、熱くなってしまうことになるのだろうか?
室内楽は涼味満点にちがいないのだが・・・・・