千曲万来余話その242「グレン・グールドのモーツァルト演奏そして問題提起」
今では、天気予報という言葉、言われなくなって久しい。気象情報とタイトルは打たれている。 北海道には梅雨がないと思われているのだけれど、エゾツユという言葉は、よく言われている。 いわゆる、天気が悪いのではなくて、空模様は曇り空続き、日照時間が極端に少ない状態である。 良くなる、のではなく、晴天が回復するともいう。悪くなるというのではなく、雨模様になるというのと同じことだ。良い悪いというのは価値の判断がからんでくるので、雨模様が必要な人もいる。ただし、一時間に100ミリを超えるとなると話は別であるのだが・・・
グレン・グールドは、1965年頃からモーツァルトのピアノソナタを発表している。 聴いて、腰を抜かすくらい驚いた人も、いらっしゃるに違いない。
盤友人は1982年にリリースされた箱物全集セットの5枚組を聴いた。 そのアレグロテンポの速いことと言ったら、プレストのテンポと同じくらいである。あのK331 トルコ行進曲のゆったりしたテンポには、びっくりしてしまう。一分間に90の速さ、まるで中庸モデラートテンポである。
アラ・トゥルカというイタリア語は、トルコ風そのようなテンポでということだから、多数派のとるテンポではなくても構わない。予想外のテンポでも、楽しいのである。 超快速のテンポは、まるで、器械が壊れたかのような印象を与えるし、超スローモーなテンポはまるで、どうしちゃったの?という疑問を催させるに充分なインパクトを持っている。すなわち常識に対するアンチテーゼだろう。問題提起なのである。
特に、グールドには奇人というレッテルが貼られているのだけれど、彼は人の期待に応える完成度の高いレコードをリリースしていたのである。ノンレガート奏法というのは、スタッカートの手前で、スタッカートのような演奏を繰り広げていて、まるでレガートを拒否しているかのごとき演奏をしている。ただし、彼のうなり声、ハミングは、レガートであることに注意が必要であろう。すなわち、彼の作り出すフレーズは、頭の中ではレガートなのであり、作り出すピアノの音は、ノンレガートであるということだ。
注意深く聴いていると、一、二拍はスタッカートでも、三、四拍目にはスラーが付いているという彼独特の音楽は、興味深い。 グールドのモーツァルトを愉しむためには、リラックスしてスピーカーに対面する他はない。
6月20日、室温22度、湿度は54パーセントのストロベリームーン、満月夜でも雨天だった。