千曲万来余話その240「シューベルトのVnソナタ、グリューミオとヴェイロン=ラクロワ」
1827年、ベートーヴェン臨終の一週間ほど前3月18日に30歳のシューベルトはお見舞いにかけつけている。
ピアノとヴァイオリンの二重奏曲、ソナチネ、ソナタ、ロンドなどシューベルトは、ヴァイオリン音楽でも名曲を残していた。
フィリップスの1971年録音のLPレコード、ピアノはロベール・ヴェイロン=ラクロワ。 ヴァイオリンは当時、50歳のアルテュール・グリュミオー。 ステレオ録音のLPレコード、左のスピーカーからグリュミオーの演奏、右のスピーカーからは、ヴェイロン=ラクロワのピアノ演奏が展開するけれどふくよかな音響で、響きが中央に渾然一体とプレゼンスしている。
グリュミオーは、フランコ・ベルギー楽派といわれていて、イザーイ、エネスコらの演奏を継承している。ヴィブラートが豊かで、音色も温かい。楽器も鳴りっぷりが立派で、それはストラディヴリスの代名詞ともなっている。 ヴェイロン=ラクロワのピアノもシューベルトの音楽にふさわしい旋律が格調高く歌われている。彼らにはヘンデルのソナタでもリリースがあって、その時ラクロワはチェンバロを担当している。
フィリップス録音のソナタの特徴は、音響が豊かで、音色も輝かしい。 モノーラル録音であると、ピアノが奥で、前面にヴァイオリンというプレゼンスになっているけれど、ステレオ録音になると左右の広がりが嬉しい印象を持たせる。これには、楽器の構造の由来があって、ピアニストが、彼の背中でソリストの音楽を受けとめ、音響的にピアノとかフォルテとかのダイナミックス強弱をコントロールするにピタリである。これは、ステレオ録音ならではの強味であろう。
ヴェイロン=ラクロワの名前はフルート奏者ジャン・ピエール=ランパルの名伴奏者としても有名。優れたアンサンブルの名手としてその名を忘れてはならない存在だ。エラートレーベルに多数ある。