千曲万来余話その239「遺言といえるソナタ32番、バドゥラ=スコダの偉業を聴く、その二」
ウィーン出身のピアノ奏者パウル・バドゥラ=スコダによるB氏ソナタ全集を一週間かけて聴いた。
LPレコード11枚の収録であるために、一夜、2枚のペースで再生してしっかり鑑賞したのだ。 一夜に4枚は可能であるけれども、二枚は他のレコード、バッハの無伴奏ソナタなどを聴いて装置 のエイジングに費やした。
こだわりその4、楽曲配列 バドゥラ=スコダの全集箱物を手にして、どことなく、一枚目から通して聴きなさいという声を感 じていた。一枚目が1番2番12番という三曲収録、11枚目は31番、32番という内容からして、作曲順番の尊重という彼の態度を判断することが可能であった。 聴いていて、たとえば、16番と17番という作品31の1と2という楽曲は、続けて聴いてなる ほどという気がした。16番はどことなくコミカルな内容て゛、17番はシリアスなテンペスト。 だから連続して聴いてその価値認識はさらに深まったといえる。 全部をそのようにとはいえないが、ときどきそのような感想をもった。楽曲配列は、作曲した順番 を尊重することにも意味があるだろう。
こだわりその5、遺言としての第32番の最終ソナタ。 ソナタというのは、4楽章形式12曲、3楽章14曲2楽章6曲という具合だから31番のソナタでもって100楽章を作曲、完成したということになったことになる。 明らかに、あの音楽第31番ソナタを聴いて一区切りという感想を持った。
そして、32番のソナタということになるのだが、二楽章の形式でマエストーソ荘重にというものとアリエッタ、小さい詠唱曲というタイトルが添えられている。第一楽章からはリストの音楽が、そして第二楽章からはシューベルトの音楽が育っていったという印象を受けた。 特にハ短調作品111という数字、最期の和音は、ラドミC、Es、Gというハ短調の主和音を、メゾフォルテで終えることから、作曲者の意志が伝わった。B氏の確信である。
それは、一体何か? 世間の誤解との闘い、その人生での孤独を、最期にはその永遠の音楽を書き終えた達成感、成就感!いわずもがな・・・としておこう。