千曲万来余話その230「巨匠マックス・ポンマー指揮の演奏会」
2016年5月13日、札幌市平岡梅林公園は紅梅、白梅は見事に満開を迎えていた。
その金曜日夜、キタラホールで第589回札幌交響楽団定期演奏会に足を運んだ。 ドビュッスイ牧神の午後への前奏曲、ノクテュルヌ夜想曲、マーラー交響曲第四番という演目。 当日はCDの収録ということで、聴衆にも緊張感が伝わっていた。いつものことではあるのだけれども、3か月ほど後にはリリースされるので、日本全国のみなさまにも鑑賞していただける。
一曲目、なかなか音楽が進まないキライは感じられたのだけれども、色彩的に華麗な管弦楽であり、古代アンティークシンバルの10テンカウントもしっかり聞こえていて、見事な演奏。あれを聴くといつも感じるのだけれど、午後の移り変わりで夕暮れに星の明滅を思わせて一際印象的だった。
ホルンを、ポンマーさんは、8挺のコントラバス側に配置している1960年代頃のタイプ。 夜想曲ノクテュルヌは、46名の女声コーラスが加わる。 1901年初演されていて、雲、祭り、海の精シレーヌというその三曲目で、無歌詞ヴォカリーズ 唱法の音楽、盤友人のシートは天井に近い。女声のソプラノが天から響いてくるように聞こえて、なかなかの演奏だった。おしまいのアルトの主音もしっかり音程ピアニッシモで支えられていて、立派な出来だったように聞いた。
1901年、ウィーンで初演されたマーラー交響曲第四番ト長調大いなる喜びへの讃歌。 子供の不思議な角笛からの音楽、第四楽章にソプラノ独唱が加わる。三管編成でフルートは四本。 音楽なんて所詮、意味を持たない音響と時間の芸術、そこへマーラーは、歌詞テキストを導入する。 幸い、定期演奏会では、無償のプログラムが配布されていて、定期会員には、そのドイツ語の歌詞対訳も事前に理解できていて、大変に助かる。緩徐楽章では、チェロの豊かな歌が、鮮やかだった。
ソプラノ市原 愛の伸びやかな高域、軟らかな声で聞き映えがした。子音が立つとさらに良かったように思われた。 彼女のステージへの登場に演出があった。楽譜で、第三楽章315小節目にルフトパウゼの指示、vorwaertsというドイツ語、前へという記入がある。その箇所から歌手は下手側に登場し、しずしずと移動して、指揮者の手前の椅子に腰をおろしたのだ。その時の音楽は総奏、ティンパニが連打されて神々しい場面、レコードでは、理解されていなかった演出効果に、指揮者マックス・ポンマーが、なかなか老獪な心配りを施していて、してやられてしまった感じ。
演奏会の途中、ティンパニー奏者が、楽器のチューニングが目について、誤解された向きもあるが、あれはデリケートな、子牛腹皮でコンデション調整で維持に一所懸命。失礼なマナーなどではなく、耳の良い、音程をキープする仕草、目障りに思われた方もいらっしゃるけれど、彼は大変立派な、打楽器奏者・音楽家だから、盤友人としてはとても楽しみにしていますよ。