千曲万来余話その208「モーツァルトのプラハ、ニコラウス・アーノンクールの指揮で聴く」
始めに、第35番ハフナーと第34番をリリースして、コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮したニコラウス・アーノンクール。針をおろして最初の和音の一撃、その印象は忘れられないものとなる。
アーノンクールの音楽は、ほとんどリタルダンドを採用しないフレーズ感、緩徐楽章のきびきびした速度テンポ感など、男性的といえるスタイルを取っている。
聴いていて、弦楽器や管楽器は、ヴィヴラートをかけていないことに気が付く。現代楽器でありながら、いわゆるピリオド楽器の演奏スタイルを採用している。
モーツァルトの音楽が、古典派の形式スタイルを強調しているかのようである。
1980年録音のハフナーなど、左スピーカーから第一、第二ヴァイオリンが聞こえてきて、右のスピーカー側でアルト、チェロ、コントラバスが聞こえてくる。伝わってくるのは、かなり緊張感の高さである。プラハ交響曲は反復ありの演奏をしている。1981年9月22、23日録音。
フルートの音色は古雅であり、オーボエやファゴットの演奏も鮮明である。
ニコラウス・アーノンクール1929.12.6~2016.3.5
母方は、オーストリアの貴族ともいわれて、ベルリンに生まれグラーツで少年時代を過ごした。音楽家かマリオネット制作かに悩んだとのこと。少年時代からチェロを弾き、戦後ウィーン音楽院に入学。古楽器演奏に関心を持ったとのことだ。1953年ウィーン交響楽団に入団し、1969年まで続けた。
同時期、ウィーンコンツェントゥス・ムジクスを結成している。1971年テレフンケン・レーベルと契約を結び、バッハの教会カンタータ全曲録音するという偉業を成し遂げた。
アーノンクールの音楽の特徴としていえることは、強弱のダイナミックスが明快であること、旋律線メロディーラインが克明であること、一定のテンボ感など、きわめて個性的である。好みの分かれるところだが、盤友人は、彼の音楽スタイルの徹底ぶりに、リスペクト尊敬の念を覚える。その説得力を愉しむところである。
3月7日の訃報によると、昨年暮れにリタイヤ表明後、病気療養に専念していたとのこと。
86歳余り長寿の演奏家人生に敬意を表し、ご冥福をお祈りします。