千曲万来余話その204「フィルハーモニア管弦楽団とカラヤンによるプラハ」
1958年9月、カラヤンとフィルハーモニア・オーケストラ・オブ・ロンドンのメンバーはモーツァルト
のKケッヘル番号504、ニ長調交響曲第38番プラハをレコーディングしている。
プロデューサーは、ウォルター・レッグ、レコーディングエンジニアは、英国人ダグラス・ラーター。
ここで、注意すべきは録音場所である。それは、ウィーン・ムジークフェラインザール。
LPレコードは、SAX2356、ディスクレーヘルは、マスクメロンといって、ペパーミントグリーンにシルバープリントの鮮やかなものである。
聴いて驚くのは、ステレオ・プレゼンスの明快さである。左右のスピーカーからの音に加えて中央の定位、フェイズが感じられる。明らかに、フルート、オーボエがそこに聞こえて、第二ヴァイオリンがあり、右のスピーカーからは、ヴィオラ=アルト、チェロ、コントラバス聞こえてくる。
左右の定位の他に、中央の感覚があるのが、現在のステレオ感覚の初期段階の録音ということができるのであろう。録音場所がムジークフェラインというのも、特筆すべきで、普通のことではない。そこにして、初めて可能な業績であったのである。
カラヤン指揮、ベルリン・フィルで1970年9月、場所ベルリン、イエス・キリスト教会ダーレム。録音エンジニアは、ウォルフガング・ギューリヒ。
1976年5月、場所ベルリン・フィルハーモニーザール。録音エンジニアは、ギュンター・ヘルマンス。
これらは、録音エンジニア、そして録音場所がそれぞれ、異なっている点に興味をひく。
同じオーケストラでも、フルート奏者1970年ではジェームズ・ゴールウエイ、1976年はアンドレアス・ブラウであろうと思われる。というのは、クレジットはなくて、そのように聞こえるのがゴールウエイ。ブラウは、その時期に当たるといえる。
プラハというニックネイムの交響曲第38番ニ長調。1878年1月、オーケストラ初演の場所がプラハだったことによる。三楽章構成。第一楽章、壮麗なアダージョで開始され、アレグロに進む。第二楽章アンダンテ、フィナーレ第三楽章は、フルート独奏の部分があり、華やかなプレストの音楽。
メヌエットという楽章が無いけれど、第一楽章を考えたとき、緩、急、緩、急の四部構成とも聞こえる。
このプラハ、名曲のレコードとして、フィリップス録音では、ヨゼフ・クリップス指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、デッカ録音では、ベンジャミン・ブリテン指揮、イギリス室内管弦楽団のリスペクト感あふれる名演奏など、名録音に枚挙のいとまがない。