千曲万来余話その202「ワーグナー、ワルキューレからウォータン終幕の独唱と魔の炎の音楽」
オーディオ装置のフォノイコライザーと、プリアンプ、そしてパワーアンプに至るまで三カ所ボリュームがついている。
音がヒズミ気味なのに対しては、フォノイコライザーの調節により、適切な加減が必要だ。
適切な音量は、プリアンプとパワーアンプのかねあいで、スピーカーの音量を操作してバランスを取る。
最近になって、フォノイコライザーと、プリアンプの適切なバランスを見つけることができた。
今まで、モノーラル録音のレコードがヒズミっぽく再生されて、そういうものだ、と思いこんでいた。
ところが、フォノイコライザーを調節して、それが取れるモノだと、おくればせながら知ったのだった。
目から鱗が落ちたごとくとは、このことを言う。きれいな再生音に到達した。
33CX1542英国コロンピア盤ハンス・ホッター、ビルギット・ニルソン、レオポルド・ルートヴィヒ指揮したフィルハーモニア管弦楽団を聴いた。
ワーグナー作曲、さまよえるオランダ人から第二幕、オランダ人とゼンタ、愛の二重唱。
ゼンタがオランダ人に答えて、貞節を誓う場面。オーケストラの伴奏が、実に、心理の高まりに寄り添い、繊細デリケイトに表現されている。管楽器、ブラスでは特にホルンの音楽が高度なテクニックを必要とする。
合奏アンサンブルも絶妙だ。オランダ人を歌うハンス・ホッターの深々としたバス独唱、ニルソンのゼンタも、貞節を誓うにふさわしい雰囲気である。
レコードは、ワルキューレの音楽に続く。
ニーベルングの指輪は、四作から成っている。序夜ラインの黄金、第一夜ワルキューレ、第二夜にジークフリート、そして、第三夜神々の黄昏へと続く。ワルキューレ軍神の乙女の一人、ブリュンヒルデをビルギット・ニルソンが歌い、呪いの魔の炎にとじこめる第三幕の終幕場面、ウォータンの独唱、大編成オーケストラの壮大な音楽が、燃えさかるごとく演奏する。
ブラスのトランペットやトロンボーンが大活躍する。
弦楽器と同じくらいの音量で、ホルンは、吹奏される。ルートヴィヒの名指揮に、応える首席ホルンの演奏を耳にして、朗々と響きわたり、安定した高音域ハイトーンを披露しているのは、かのデニス・ブレインだろうと思う。しみじみと、沁みる音楽になっている。