千曲万来余話その201「リスト、超絶技巧練習曲集ホルヘ・ボレットを聴く」
良い音とは何か?オーディオの道は、果てしなく遠い。だから、休みやすみ、その道のりを歩くことになる。
いい音とは、きれいな音のことではない。
その音にぐっとくるものがあるか?問われるのだ。その魅力とは何か?
札幌音蔵社長KT氏は、あくなき追求をする伝道師。このたびは、モノーラル昇圧トランスを手配した。
つい先ほど、JSの昇圧トランスを使用して、その高音域のシャープな再生音にぐっときたばかりであった。
このたび、新作の試作品が手に入って、実際にスピーカーを鳴らすことになった。
高音域に衝撃はなかった。けれど、中低音域の豊かさは何なんであろう。豊穣の音響世界である。
フランツ・リストは、シューベルトに続く、ロマン派ピアノ音楽の開祖。
そのピアニズム、音楽は、ベートーヴェンの即興性を、さらに飛躍させた音楽になっている。
トランセンデンタル・エチュード、超絶技巧練習曲を、ホルヘ・ボレット1914キューバ、ハバナ出身~1990カリフォルニアの自宅で没したピアニスト、RCA録音レコードで聴いた。
色彩豊かで、華麗なテクニックは、リストの即興性豊かな音楽に、いかにもふさわしい。
右手の繊細なタッチ、そして、その魅力は左手打鍵の豊かな音色のタッチにある。
鍵盤楽器の音楽入門は、バッハの平均律クラヴィーア曲集が、比較的容易な手始めである。そしてハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンのピアノソナタへと進み、シューベルトの世界へジャンプする。
ピアノの詩人、ショパン、そして同時代のシューマン、ブラームスなど、ドイツ音楽の花園。
フランス音楽では、バロック以前のクープラン、ラモーの世界があり、近代では、ドビュッスイ、ラヴェルの音楽が、ピアノ独奏曲音楽の王道だ。また、ロシアでは、ショパンとシューマンの世界から抜け出たようなスクリャービンの音楽もある。
リストの音楽は、オーディオ的には、モノーラル録音時代のレコードを上手に再生して、その醍醐味を味わえるようになったといって過言ではない。
良い音とは何か?
それは、ピアノ独奏曲をうまく再生し、ぐっと来たとき、ヴァイオリン独奏曲も鮮やかに再生できて、まことにもって、言うこと無し!モノーラルLPレコード、永遠なれ!というものである。