千曲万来余話その195「ジェイムズ・ゴールウエイ、名演奏家としての条件」
アイルランドのダブリン出身で、1939年生まれのフルート吹きがいる。1968年から1975年までベルリン・フィルハーモニーで吹いていた。録音としては、1970年から75年までカラヤンが指揮したディスクの首席フルーティストが、ジェイムズ・ゴールウエイ。その前後は、カールハインツ・ツェラーが務めていたし、アンドレアス・ブラウもその後がまである。ベルリン・フィルには、1950年から59年までオーレル・ニコレが在籍していたから、そのホットスポットの華々しさたるや、豪華絢爛である。
カラヤンが指揮したシューマン、メンデルスゾーンの交響曲全集の首席フルートでジミーは吹いている。
彼の音は、一聴してすぐ判別できるキャラクターだ。ヴィヴラートが巧妙で、そのフレージングは見事。
今年はモーツァルト生誕260年周年、1756年1月27日ザルツブルグで誕生日を迎えている。
彼の21歳頃作曲、1777~78年にKVケッヘル番号313でト長調のフルート協奏曲第一番は、マンハイムで書き上げられている。ギャラントスタイルといわれる音楽様式。
ルドルフ・バウムガルトナー指揮したルツェルン祝祭管弦楽団、1974年9月26~29日録音のLPレコードは、珠玉の名盤である。
ジミーの演奏スタイルは、華麗だ。
アンブシュアーといって、その吹き口のタイプは、明確、口笛を吹くようなその発音は、堅固であり、音量の強弱、高低の幅広さは、超一流の所以である。彼の演奏は、的確な和音の理解があって、楽譜上の構造把握、和音構成のスコアリーディテング、リトミックは完璧である。だから1小節の中で、和音の一音と経過する音を吹き分けている。
和音というのは、主和音トニックは、長調と短調を区別する。第三音が長三度の時、長三和音と呼び、短三度の時、短三和音になる。五度上の和音は属和音、ドミナントと呼び、下の五度音程の三和音を下属和音、サブドミナントと呼ぶ。ドミソ、ソシレ、ファラドという三つを、きちんと意識して演奏している、その意識が伝わる演奏が、名演奏の条件になる。
モーツァルトの協奏曲、バウムガルトナー指揮は、格調高くて軽やかである。実力ある独奏者を迎えて、その悦びが充分に表現されていて、一期一会の記録として立派、存在価値がある。
カデンツァといって、独奏部分は、聴き応えがある。作曲者の上を行くソリストの独壇場。
ライナーノーツには、シルバーのフルートと表記されていて、後の彼は、プラチナ、ゴールドなど金属系の楽器を駆使している。よく響く大きい音量の楽器だ。
フーベルト・バルワーザーというオランダのソリストは木管で吹いていて、モノーラル録音のフィリップスレコードは、その木質の響きが魅力的である。