千曲万来余話その194「ピアノソナタ32番、モノーラル録音かステレオ録音か?」
スピーカーの置き方で、下に敷いている素材は何を使っているだろうか?
盤友人は、木材でサイコロ状のもの、一台につき6センチ角サイズを8個、かませている。
木材というと、励磁、フィールド式であるために交流と直流の電源部整流器のトランスの下にも15センチ直方体の角材を敷いている。この敷き方で年輪面を上下にしていた。それを左右という横敷きに変更した。
振動対策として、プレーヤーなど、木材のブロックを敷いているので全てを変更する。そのことによって、スピーカーの鳴り方が激変を成し遂げた。前の方に音響がせり出してくるように、部屋に音が充満しているように感じられる。これは、愉快である。ピアノソナタなどの独奏曲で、ピアノの反響板に弦の振動が当たっているのが見えるかのごとくである。
世間の常識として、ピアノソナタは、モノーラル録音で充分、ステレオ録音は必要ないというものがある。これは、一つの見解であり、検証を必要とする。
先日、キングスーパーアナログレコードを再生して、びっくり仰天した。ウィルヘルム・バックハウス演奏したベートーヴェン、ピアノソナタ第32番ハ短調作品111。2楽章からできていて、その終わり方は、彼の心境を十全に表現していて、作曲する心理が、ひしひしと伝わってきて、感無量である。
バックハウスのディスクは、モノーラル録音1953年のものと、ステレオ録音1961年のものスーパーアナログと比較して鑑賞した。
モノーラル録音の方は、ピアノ音楽として充分な表現力、力感が伝わってきて簡潔である。
ステレオ録音のレコードは、ピアノの鳴り方が生々しい。左手の打鍵が充分に再生されて楽器の鳴りが力感溢れている。すなわち、モノーラル録音以上の情報として、楽器の鳴り方というプラスアルファのものが再生されていて、興味を惹かれる。ピアノという楽器の再生音である。
演奏者の録音時の若さに、加齢の妙味が加わっているのは、微妙に味わいが深い。
モノーラル録音には、前後の奥行きが感じられるのに対して、ステレオ録音には、前後左右という立体感が加えられることになる。
電源部トランスには、10アンペアのヒューズが差し込まれている。その金属部分を接点洗浄として粒子の細かい、製生水を使用して拭くと、あらあらまあまあ、スピーカーの鳴り方が向上するではないか。
実に、溜飲がさがる思いである。
モノーラル、ステレオ、それぞれ再生するとき、ピックアップカートリッジを交換することは、いわずもがなである。手間がかかる。このことを、あだにおろそかにするべからず。通過儀礼として、楽しみが待っていること、受け合いだからである。それを体験している人には、たまらないということお分かりであろう。