千曲万来余話その186「メンデルスゾーンを本歌取りしたリムスキー・コルサコフ」
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ1809.2.3ハンブルグ生まれ~1847.11.4ライプツィヒ没、わずか38歳の人生。1826年、17歳の時シェイクスピアの戯曲夏至夜の夢に音楽を作曲している。この序曲を、ルドルフ・ケンペ指揮する、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の名演奏で聴いた。1961年1月のRCA録音によるヴァイオリン両翼配置。
幻想味一杯ファンタジックで、木管楽器フルート、クラリネット、ファゴットのアンサンブルは、音程を合わせる妙味である。音響的ユレがない演奏は緊張感があり、名人芸である。
夏の夜の夢、はたと膝を打ち、千夜一夜の夢物語へと誘われた。
ニコライ・リムスキー=コルサコフ1844.3.18ティフヴィン生まれ~1908.6.21リュベンスク没には、交響組曲シエラザードを1888年に作曲している。
今年、オリンピック・エンブレムで、デザイン盗用疑惑が問題になった。限られた条件の中で、意匠の類似
など発生はしやすいといえるだろう。日本の和歌の世界では、新古今和歌集に万葉集のイメージを借用する技法が多様である。それを本歌取りという。
さしずめ、リムスキー・コルサコフは、夢というキーワードを通して実行している。メンデルスゾーンの音楽の管弦楽法を借用している。盗用とは別物である。アイデアの盗用ではあらずして借用、あるいは本歌取りである。
ケンペ指揮したロイヤル・フィルの演奏についていうと、彼はトーマス・ビーチャムの指名を受けて着任したというエピソードは有名である。ウォルター・レッグがカラヤンやクレンペラーのためにレコーディング専門のオーケストラ・プレーヤーをかき集めて創立したフィルハーモニアオーケストラ・オブ・ロンドン。それにタイアップしたかのように、トーマス・ビーチャム卿は私財を使って設立した男性奏者専門の管弦楽団ロイヤル・フィルハーモニー、ルドルフ・ケンペは女性奏者も採用してスタートした。
その最初のリハーサル風景写真を見ると、弦楽器は、ヴァイオリン両翼配置である。
大体、それは作曲者の世界尊重であって、ヴァイオリンを束ねのは、指揮者、演奏者達の意向に過ぎない。
メンデルスゾーンの名曲、夏の夜の夢を聴いていると、その管弦楽法はステレオ録音で魅力を発揮している。