千曲万来余話その156「リヒャルト・シュトラウス作曲、変容メタモルフォーゼンについて」
1945年にR・シュトラウスは、23独奏弦楽器のための習作、変ホ長調を作曲している。彼は1864年6月11日ミュンヘンに誕生。そして大戦時のがれきの山を前にして、弦楽器による単一楽章、20分余りの作品を作曲した。主題は、ベートーヴェンの第三交響曲・英雄、第二楽章、葬送行進曲によっている。
弦楽器により、がれきを前にした作曲者の心情が余すところなく描かれている。ミュンヘンに対する、哀悼の念が
ひしひしと伝わってくる。彼は、1949年9月8日10時14分ガルミッシュにて死去した。
EMIの録音、サー・ジョーン・バルビローリ指揮するニューフィルハーモニアオーケストラの名盤がある。
イギリス人達の演奏によるものであるが、国籍に関係なく、ずっしりと手応えがあり感動させられる。
サー・ジョーンは、1970年、万国博来日公演を果たせずに、亡くなっている。当時、ジョージ・セルも、あいついで亡くなり、評論家吉田秀和は、朝日新聞に、死の大鎌は容赦なく振り下ろされるとか寄稿されていたのが記憶されている。
バルビローリは、リハーサル前にもブランディーをたしなんでいたとか、書かれていたけれど、彼のサウンドを評してブルゴーニュ風とかいわれていたものだ。こく、味わいがある。
昔、トスカニーニが、彼をニューヨーク・フィルの後任指揮者に迎えていた。経験豊かである。彼らに共通することは、チェロを演奏していたということだ。
R・シュトラウスの作品、弦楽器だけのもので、その楽器配置を考えてみたい。
23独奏楽器ということである。弦楽器五部ということで、コントラバスは3挺とすると、アルトとチェロは4挺で、第一第二ヴァイオリンは、6挺ずつだろう。合計23弦楽器。
彼が指揮したアルプス交響曲演奏会風景写真からして、コントラバス下手配置、ヴァイオリン両翼、中央にチェロとアルトが想像される。
コントラバスなど、低音楽器がエロイカ葬送行進曲のテーマを奏するとき、お仕舞いに、タイタン巨人が振り返った画が思いうかばれた。戦争で破壊し尽くされた故郷ミュンヘン、そのがれきの下、多数の尊い人命を追悼する、作曲者の無念に思いを馳せた。