千曲盤来余話その139「ブルックナー、長大な交響曲の作曲家」

交響曲というと、ハイドンから始まって、ショスタコーヴィッチにいたる200年の歴史がある。
後期ロマン派の大交響曲作家アントン・ブルックナー1824年9月4日アンスフェルデン、オーストリア生まれ~1896年10月11日ウィーン没は、カトリック寺院のオルガニスト、作曲家として人生を過ごした。
1874年に第四番変ホ長調第一稿を作曲している。彼の場合、手を入れ直したり、他人に手を入れられたりして第二稿や、ハース版、ノヴァーク版など、最終楽譜が一様ではない。いずれにしても、ハイドンの交響曲演奏時間の二倍はするという、長大さは印象的である。ある人に言わせると、ブルックナーの音楽に比べると、ブラームスの交響曲は短いね、ということになる。ブルックナーの長大さは、繰り返し音型の体験に覚悟が必要である。
第四番は、ロマンティシュというネイミングもあって、わりと人気のある曲だ。
ロマンティークという言葉、ディ・ロマンティーク デス・ヴァルデスというと森の神秘というドイツ語になる。
浪漫的、空想的、夢幻的などというイメージは、あてはまらない言葉でもない。LPレコード三面でちょうど良い割り当てである。第一楽章、第四楽章それぞれ20分ほどの演奏時間である。
この音楽の特徴は、ヴァイオリンのトレモロ奏法がある。弓を小刻みに演奏し、曲の開始、冒頭に奏され、原始霧などと言われたりして神秘的である。
1963年9月、オットー・クレンペラー指揮は、フィルハーモニア管弦楽団で名演奏をレコーディングしている。
1976年1月、ルドルフ・ケンペはその晩年の演奏として、ミュンヘン・フィルハーモニーと録音している。
この両者の共通する特徴として、トレモロの音が、左右のスピーカーから聞こえることである。
ケンペの演奏は、左のスピーカーには、第一Vnとアルトがあって、右のスピーカーから第二Vnを耳にできる。
これは、きわめて重要な経験である。ヴァイオリンの第一と第二の音楽が左右から聞こえることは、必要な条件であり、さらにいうと、ホルンの音色が右側から朗々と聞こえるケンペ盤は、印象的である。そのうえティンパニーのトレモロの締めくくりの決め打ちは、ミュンヘン・フィルの音楽として特徴的である。
ケンペの演奏は、軽快で、歯切れ良く、ブラスの燦然とした音色、弦楽器のたっぷり歌う演奏は、彼の白鳥の歌として貴重である。